日本栄養・食糧学会誌
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ウメ漬け原料としての果実採取時期と各種成分, とくに有機酸との関係
金子 憲太郎太田 匡子河野 圭助前田 安彦
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1989 年 42 巻 2 号 p. 179-184

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抄録

ウメ漬け原料としての果実採取時期と成分との関係を, ‘高田豊後種'のウメを実験材料として検討した。その結果, 果実の採取はリンゴ酸がクエン酸より顕著に多い時期に行う必要があると考えた。
その理由は次のようである。
1) AIS中のCaは6月中旬までほとんど変化しなかったが, それ以後しだいに減少した。
2) TPに占めるHSPの比率は6月中旬までほとんど変化しなかったが, それ以後減少した。一方, HWSPの比率は6月の中旬までほとんど変化しなかったが, それ以後増加した。
3) リンゴ酸とクエン酸の総量は果実の肥大に伴って増加したが, リンゴ酸は6月中旬に最高になり, それ以後急激に減少した。一方, クエン酸は6月中旬まで漸増, その後急増した。なお, 6月下旬にはリンゴ酸とクエン酸がほぼ同量になった。
4) 6月の下旬以後に採取したウメで製造したウメ漬けは軟化した。
以上の結果, ウメ果実の肥大中に増加したクエン酸はペクチン質と結合している多価陽イオンとキレート結合しそれらを遊離させ, その結果, HSPをHWSPに変化させると考えられる。そのことは, 結果的にペクチン質による細胞連結形態の変化を引き起こし, ウメ漬けにした際の軟化の要因になると考えた。

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