日本栄養・食糧学会誌
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プルランの消化性と発酵性
岡田 勝秀米山 勝万代 隆彦阿賀 創堺 修造市川 富夫
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1990 年 43 巻 1 号 p. 23-29

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抄録

ヒト生体内における糖質の消化条件に適応する, in vitro消化試験系を確立した。この試験系により, プルランの消化性を調べたところ, 胃酸ではまったく消化されず, 唾液アミラーゼと膵液アミラーゼにより低分子化され, さらに小腸粘膜酵素では低分子化されるとともに, 少量のグルコースを生成することが明らかとなった。小腸以前の上部消化管でグルコースまで消化されて吸収されるプルランは摂取量の5%以下であると推定された。この結果はプルランが「ヒトの消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義される食物繊維にあてはまることを示唆している。また大腸内での発酵を, 糞便培養法によるin vitro試験系で再現した。その結果, プルランは大腸内ですべて発酵されることが明らかとなった。発酵により生成する短鎖脂肪酸は, 酢酸プロピオン酸, n-酪酸が多く, コハク酸, がわずかに生成した。酢酸, プロピオン酸, n-酪酸の生成量はプルラン中のグルコース1残基当りそれぞれ0.58, 0.21, 0.24であった。また炭素回収率は47.8%となった。
生体におけるプルランのエネルギー評価は, 消化試験および発酵試験の結果を用いて行った。エネルギーは2.10kcal/g-プルラン (8.79kJ/g-プルラン) と計算された。しかし実際には, 糞便への短鎖脂肪酸の排泄量の増加が考えられ, プルランのエネルギーはさらに低いと推定した。

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