日本栄養・食糧学会誌
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ラットの組織中ビタミンB6酵素活性および血中ビタミンB6濃度に及ぼす妊娠の影響
渋谷 まゆみ久岡 文子岡田 美津子
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1990 年 43 巻 3 号 p. 189-195

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抄録

妊娠20日目のラットのビタミンB6栄養の状態を知る目的で, 非妊娠ラットを対照群として比較検討した。代表的B6酵素であるAlaAT, AspAT (肝臓可溶性画分, 赤血球) ホスホリラーゼ (腓腹筋) の活性を測定した結果, 赤血球AlaAT, 肝臓AspAT, ホスホリラーゼ活性には妊娠による影響がなかった。赤血球AspATは妊娠時に約20%の活性増加があったのに対し, 肝臓AlaATは対照群の30~45%にまで活性低下していた。この低下は測定系中に十分量のPLPを添加してもまた, 食餌中のピリドキシン塩酸を5倍量増しても活性の回復はなかった。一方, 組織中PL+PLP含量については血漿中では妊娠時に有意な減少を認めたが, 逆に赤血球中では有意な増加を示し, 計算値の全血中PL+PLP含量は両群に差がなかった。また, 肝臓中のPL+PLP含量も肝臓g当りの含量は低下していたが妊娠時の肝臓肥大, 体重増加を考慮すると両群に差がなかった。以上の結果から, 20%カゼイン食で餌1kg当りピリドキシン塩酸8mgを含む食餌で飼育したラットにおいて, 妊娠20日目に潜在性B6欠乏を示唆するデータは得られなかった。妊娠時のB6栄養の状態を示す指標として血漿中のPLP量の測定が汎用されているが, 赤血球のPL, PLP量の測定も合わせて行う必要があると思われる。

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