日本栄養・食糧学会誌
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ヒトにおける小麦アルブミンの単回投与による食後血糖上昇抑制作用と安全性
森本 聡尚宮崎 俊之村山 隆二児玉 俊明北村 育夫井上 修二
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1999 年 52 巻 5 号 p. 285-291

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抄録

小麦粉の水溶性タンパク質画分を抽出・分離した小麦アルブミン (WA) はアミラーゼ阻害活性を有し, 糖質の消化吸収を遅延させる。WAは小麦粉の約150倍のヒト唾液ならびに膵液アミラーゼに対する阻害活性を有しており, その作用本体は0.19-アルブミンと呼ばれる既知のタンパク質であった。本研究は米飯摂取後の血糖上昇ならびにインスリン分泌に対するWAの影響を正常型 (12例), 境界型 (12例), 糖尿病型 (22例) に属する被験者で検討した。各被験者に300g米飯負荷試験を2回ずつ実施し, クロスオーバーで1回は対照とし, 残る1回に1.5gのWAを米飯に混合して摂取させた。WA摂取時は対照に比べ, 正常型, 境界型, 糖尿病型いずれの型においても血糖上昇の抑制が見られ, 境界型および糖尿病型の負荷30分後および1時間後の血糖値は有意の低下を示し (p<0.01), 正常型でも負荷30分後の血糖値は有意の低下を示した (p<0.01)。負荷3時間後までの血糖値AUC (上昇面積値) は糖尿病型で有意に減少し (減少率22%, p<0.01), 正常型, 境界型でも減少傾向が見られた。血糖上昇の抑制に相応して血清インスリン濃度も低く推移し, 境界型の負荷30分後 (p<0.05) および糖尿病型の負荷1時間後 (p<0.01) には有意の減少が見られた。WA摂取による腹痛, 下痢, 放屍などの消化器症状は観察されなかった。WA摂取により, 消化器症状を伴わずに, 米飯摂取後の血糖上昇が抑制され, 食後高血糖の予防にWA摂取が有用である可能性が示された。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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