日本栄養・食糧学会誌
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52 巻, 5 号
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  • 笠岡 誠一, 森田 達也, 猪飼 利圭, 大橋 晃, 桐山 修八
    1999 年 52 巻 5 号 p. 263-270
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    本試験ではHASの糞便量および排便促進に及ぼす影響について検討した。その結果, HASは摂取量に応じて糞便の個数, 重量および体積を増加させたが, CS飼料群に比べ有意な増加を示したのは20%HAS飼料からであった。5-20%HAS飼料群の盲腸内容物重量はCS飼料群に比べ有意に高い値を示したが, 糞中へのスターチ排泄量に有意な増加が認められたのは10-20%HAS飼料群においてであった。20%HAS飼料群ではCS飼料群に比べ有意に高い糞便乾燥重量および糞中窒素排泄量を示し, 糞中ジアミノピメリン酸排泄量も高くなる傾向が認められた。HAS飼料群 (5-20%) の盲腸内総SCFA量はCS飼料群に比べ有意に高い値を示したが, 20%HAS飼料群では総SCFA量を越える量のコハク酸が検出された。20%HAS飼料群の糞便中水分含量はCS飼料群に比べ有意に高い値を示し, HAS飼料群の消化管内通過時間は短縮する傾向を示した。以上の結果から, HASの糞便重量増加および排便促進効果はおだやかであり, 比較的大量に摂取したときにのみ発現するものと考えられる。また, これらの効果は主に発酵によって生成したコハク酸による大腸内水分量の増大に基づくものであり, さらに菌体増加による大腸内容物のカサの増大も一部関与していると考えられた。
  • 関 英治, 川崎 晃一, 吉田 真弓, 筬島 克裕, 玉屋 圭, 松井 利郎, 筬島 豊
    1999 年 52 巻 5 号 p. 271-277
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    Y-2, VYおよびMIXのSHRにおける降圧作用を検討した。
    単回経口試験では, Y-2を10, 100および1,000mg/kg投与すると, 投与4時間後に投与前に比して血圧が有意に低下した。Y-2の降圧作用は10~1,000mg/kg投与量の範囲では用量依存性を示さなかった。VYを1mg/kgおよび10mg/kg投与すると投与2時間後から血圧は用量依存的な傾向で低下を示し, 投与8時間後にコントロール群に比して, 有意に血圧は低下した。MIXを10mg/kg投与すると投与6時間後に投与前に比して血圧は有意に低下した。心拍数, 体重はすべての投与群でコントロール群に比して有意差はなかった。
    連続試験では, Y-2を1,000mg/kg投与すると投与7日後にコントロール群に比して血圧が有意に低下した。VYを10mg/kg投与すると投与4日後に投与前およびコントロール群に比して血圧が有意に低下した。MIXを10mg/kg投与すると投与7日後および10日後にそれぞれコントロール群および投与前に比して血圧が有意に低下した。投与休止5日後もY-2, VYおよびMIXはそれぞれ有意な血圧低下作用を示した。心拍数, 体重はすべての投与群でコントロール群に比して有意差はなかった。
    以上, Y-2, VYおよびMIXはSHRにおいて経口投与で降圧作用を示すこと, 連続投与時の降圧作用に耐性を生じないこと, 投与休止後も降圧作用がある程度持続することが明らかとなった。
  • 松浦 寿喜, 岸本 三香子, 市川 富夫
    1999 年 52 巻 5 号 p. 279-284
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    フラクトオリゴ糖添加成分栄養剤を投与したラットの腸内環境およびミネラルの吸収機能の変化を, 門脈血中アンモニア濃度およびカルシウム, マグネシウム, リン濃度を指標として調べた。
    1) 門脈血中のアンモニア濃度はE群に比しEO群で投与後1および3日で有意に低値を示したが, その後両群間に差は認められなくなった。
    2) 門脈血清中のミネラル濃度は, Caが投与後5日で, Pが投与後3および5日でEO群でE群に比し有意に高値を示したが, 7日では両群間に差は認められなくなった。Mgは両群間に有意な差は認められなかった。
    以上の結果より, 成分栄養剤へのフラクトオリゴ糖の添加は, 投与初期において門脈へのアンモニアの流入を抑制し, さらにCaおよびPの吸収を促進することが明らかとなった。
  • 森本 聡尚, 宮崎 俊之, 村山 隆二, 児玉 俊明, 北村 育夫, 井上 修二
    1999 年 52 巻 5 号 p. 285-291
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    小麦粉の水溶性タンパク質画分を抽出・分離した小麦アルブミン (WA) はアミラーゼ阻害活性を有し, 糖質の消化吸収を遅延させる。WAは小麦粉の約150倍のヒト唾液ならびに膵液アミラーゼに対する阻害活性を有しており, その作用本体は0.19-アルブミンと呼ばれる既知のタンパク質であった。本研究は米飯摂取後の血糖上昇ならびにインスリン分泌に対するWAの影響を正常型 (12例), 境界型 (12例), 糖尿病型 (22例) に属する被験者で検討した。各被験者に300g米飯負荷試験を2回ずつ実施し, クロスオーバーで1回は対照とし, 残る1回に1.5gのWAを米飯に混合して摂取させた。WA摂取時は対照に比べ, 正常型, 境界型, 糖尿病型いずれの型においても血糖上昇の抑制が見られ, 境界型および糖尿病型の負荷30分後および1時間後の血糖値は有意の低下を示し (p<0.01), 正常型でも負荷30分後の血糖値は有意の低下を示した (p<0.01)。負荷3時間後までの血糖値AUC (上昇面積値) は糖尿病型で有意に減少し (減少率22%, p<0.01), 正常型, 境界型でも減少傾向が見られた。血糖上昇の抑制に相応して血清インスリン濃度も低く推移し, 境界型の負荷30分後 (p<0.05) および糖尿病型の負荷1時間後 (p<0.01) には有意の減少が見られた。WA摂取による腹痛, 下痢, 放屍などの消化器症状は観察されなかった。WA摂取により, 消化器症状を伴わずに, 米飯摂取後の血糖上昇が抑制され, 食後高血糖の予防にWA摂取が有用である可能性が示された。
  • 森本 聡尚, 田中 俊一, 宮崎 俊之, 児玉 俊明, 北村 育夫, 井上 修二
    1999 年 52 巻 5 号 p. 293-300
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    小麦アルブミン (WA) は, その主成分である0.19-小麦アルブミンの有するアミラーゼ阻害活性によって, 炭水化物の消化吸収を遅延させ, 食後血糖上昇を抑制することが単回投与の試験で確認されている。本研究では, 軽症インスリン非依存性糖尿病 (NIDDM) 患者計24例に, WAをスープの形態で1日3食, 3カ月間摂取させ, HbA1cならびに, その他の臨床的指標・所見などへの影響を二重盲検法で検討した。摂取開始前のHbA1c値により, 被験者を低HbA1c層 (5.5%以下) と高HbA1c層 (5.5%より高く8.0%以下) に分類した。HbA1c値は, 対照群では, 摂取開始前と比べて, 摂取期間を通して, 有意な変化がなかった。一方, WA摂取群では, 低HbA1c層では変化が見られなかったが, 高HbA1c層では, 摂取3カ月間のHbA1cに関するAUCが有意に低下し (p<0.05), 摂取終了後の観察期間後も低下傾向が継続した。WA摂取群の1例で摂取初日および2日目に腹鳴が自覚されたが, 3日目以降収まり, その他にはWA摂取によると考えられる有意な随伴症状は認められなかった。WA摂取による食事摂取後毎の血糖上昇抑制を長期間反復することにより, 長期的な血糖コントロールが改善される可能性が示唆された。したがって, WAは軽症糖尿病や耐糖能障害を有する者に対する食事療法の補助手段として, 今後の活用が期待できるものと考えられた。
  • 江藤 義春, 伊藤 友美, 西岡 茂子
    1999 年 52 巻 5 号 p. 301-306
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    乳清タンパク質 (WPI) をBacillus subtilis 由来のアルカリプロテアーゼとブタ膵由来のトリプシンにより酵素分解して得られた低分子量のペプチド粉末 (WPH: Val-Tyr, Phe-Leu, Ile-Leu, Val-Pheなどが含まれる) をSHRに連続的に経口投与した場合の血圧上昇抑制効果を分解前のWPI投与群を対照として比較検討し, 以下のような結果を得た。
    1) WPH粉末中には in vitro で強いACE阻害活性が認められたが, その未分解物であるWPI粉末ではWPH粉末の5倍量を用いても阻害活性はみられなかった。
    2) WPH粉末を重量比で10%となるように混入した餌をSHRに経口投与し, 経時的な収縮期血圧の変化を測定した結果, 投与開始2週間目から対照のWPI投与群に比べて有意 (p<0.001) な血圧上昇抑制効果が認められ, 3週間目ではWPI投与群より28mmHgも低値 (p<0.001) であった。
    3) 実験終了後の臓器 (心臓, 肝臓, 腎臓, 肺, 腸, 脾臓, 膵臓) 重量はいずれも対照群との間に有意差は認められなかった。
    4) 実験終了後の血清成分の分析では, WPH投与群の総コレステロール値が対照群に比べて有意 (p<0.05) に低かったことから, WPH粉末投与による血清脂質の改善効果も示唆された。
    以上の結果から, WPH粉末中に含まれるVal-Tyr, Phe-Leu, Ile-LeuおよびVal-PheなどのACE阻害ジペプチドが腸管からそのまま吸収されてSHRの血圧上昇を抑制しているものと推定されたが, これらの詳細については今後さらに検討が必要である。
  • 小板谷 典子, 塚原 典子, 江澤 郁子
    1999 年 52 巻 5 号 p. 307-313
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    閉経期女性における腰椎BMDの5年間の減少に対する関連因子について, 閉経状態別に検討することを目的とした。東京都在住の40-60歳女性287名を閉経状態により閉経前: PRE群, perimenopause から閉経後3年まで: PERI群, 閉経後4年以上: POST群の3群に分け, 各群ごとにBMDの5年間の変化率と関連する因子について初回時点での年齢・BMD・BMIを調整して検討した。
    1) PRE群では, 初回・5年後とも運動習慣を有していた者, 初回時点でカルシウムを800mg以上摂取していた者において, BMD減少率は有意に小さかった。
    2) PERI群では, BMD変化率は体重・BMI・除脂肪体重の変化率および初回時体脂肪率と有意な正の相関を示し, 初回時除脂肪体重と負の相関を示した。一方, 運動習慣やカルシウム摂取との関連は認められなかった。
    3) POST群では, BMD変化率は体重変化率と有意な正の相関を示したほか, カルシウム摂取量が初回・5年後とも600mg以上であった者ではBMD減少率が有意に低値であった。
    以上より閉経前, perimenopause から閉経後3年, 閉経後4年以上の各時期でBMD減少率に影響を及ぼす因子が異なることが示され, 閉経の時期に応じた生活指導が必要であると考えられた。
  • 松尾 達博, 鈴木 正成
    1999 年 52 巻 5 号 p. 315-319
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    栄養素組成が同じで調理法の異なる米食の血糖・インスリン反応を健常者を用いて検討した。
    健常男性7名にブドウ糖100gに相当する炭水化物を含む妙飯 (妙飯と味噌汁) とご飯食 (ご飯, 野菜妙め, 味噌汁) を摂取させ, 食後3時間にわたって経時的に血糖値, 血清インスリン, 中性脂肪および遊離脂肪酸濃度を測定した。実験食のタンパク質, 脂質, 炭水化物のエネルギー比をそれぞれ16, 32, 52%とし, エネルギーを744kcalとした。その結果,
    1) 食後の血糖・インスリン反応は, 妙飯に比べてご飯食で高値であった。180分までの血糖値上昇面積を血糖上昇反応の指標とした場合, ご飯食を100とすると妙飯は31であった。
    2) 食後の血清遊離脂肪酸濃度は, 妙飯に比べてご飯食で低値であったが, 血清中性脂肪濃度には食事間の差は見られなかった。
    以上より, 米食の血糖・インスリン反応は, その調理法に影響を受けることが示唆された。
  • 脊山 洋右
    1999 年 52 巻 5 号 p. 321-328
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    Cholestanol resembles cholesterol, but its significance has remained unclear because of its low concentration in the body. However, in cerebrotendinous xanthomatosis, a genetic disorder of cholesterol metabolism, deposition of cholestanol produces several pathological conditions such as tendon xanthomas, cerebellar ataxia, pyramidal signs, cataracts and dementia. We have been investigating this disease for 23 years from the viewpoint of biochemical diagnosis. We established a procedure for quantification of cholestanol by HPLC, and also an assay method for sterol 27-hydroxylase. We also found several mutations of the CYP 27 gene in 10 CTX families. Furthermore, we established experimental animals with CTX by feeding then a cholestanol diet, and produced corneal dystrophy and gallstones in mice, and apoptosis of cerebellar neuronal cells from rats. CTX can be treated with chenodeoxycholic acid, which reduces the cholestanol concentration in serum. These findings suggest that cholestanol has a toxic effect. It will be necessary to determine the cholestanol content of food for the treatment of CTX patients and to prevent the clinical manifestations produced by cholestanol administration.
  • 伊東 蘆一, 須山 靖男
    1999 年 52 巻 5 号 p. 329-333
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    Numerous clinical and epidemiological studies have indicated that a high sodium intake, even within the range of the amounts contained in habitual diets, is associated with high urinary calcium excretion in both young and adult healthy subjects of both sexes. Results of some clinical and epidemiological studies on elderly women also show that high sodium intake accelerates urinary excretion of deoxypyridinoline, a specific marker of bone resorption. Furthermore, in two epidemiological studies of postmenopausal women, negative associations between sodium intake and bone mineral content were observed. These findings suggest that habitual excess dietary salt (NaCI) could be a factor resulting in bone loss through the promotion of bone resorption, at least in elderly women.
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