抄録
生活習慣病や寿命は数十年の長期にわたる栄養, 運動等の影響と遺伝子多型で決まる。生活習慣病と関係の深い主要な多型である飢餓耐性一塩基多型 (thrifty SNP) の頻度はモンゴロイドでは白人よりも高い。SNPと栄養調査をアジア・太平洋地区6カ国で行い, 食生活の西欧化・運動の低下が飢餓耐性SNPに作用して肥満, 糖尿病, 動脈硬化症を促進することを示した。次に, 本学栄養クリニックでは過去33年間に4群点数法と運動の介入を行った。初診時の代謝, 高血圧, 高血糖はSNPの影響を受けたが, 生活習慣の変容で正常値に戻り, 数十年にわたって持続し, 要介護者, 重症生活習慣病患者は一般の頻度に比較してはるかに少なかった。これは介入に反応しやすいUCP3p, UCP2, apoE, mtDNA等のSNPのためである。米国の糖尿病予防計画 (2002年) の結果, 薬物よりも生活習慣改善が糖尿病に罹患しやすい非白人において最も有効であることが示された。この結果は管理栄養士の活動の有効性を示すものである。