日本栄養・食糧学会誌
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転写調節共役因子による生体機能制御
平成18年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞
亀井 康富
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2006 年 59 巻 6 号 p. 331-335

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抄録
食物由来のビタミンAやDなどの脂溶性ビタミン・脂溶性ホルモン類は, 転写調節因子である核内受容体を介して遺伝子発現調節を行う。近年の研究により, 核内受容体による転写調節には転写調節共役因子 (cofactor) が重要であることが明らかとなった。筆者らはCREB Binding Protein (CBP)が, cAMPシグナル下流のCREBのみならず, 核内受容体の転写調節共役因子としても機能することを見出した。次に, 筆者らは, 人体のエネルギーバランスに重要な組織である骨格筋と脂肪組織における転写調節共役因子の役割を解析した。栄養過多により肥満が生じ, 飢餓により身体の適応現象として例えば筋萎縮が生じる。筆者らはPGC1βという核内受容体転写調節共役因子をクローニングし, オーファン核内受容体ERRを特異的に活性化し肥満を抑制しうることを見出した。また, 転写調節共役因子として知られるFOXO1が栄養条件により骨格筋で発現変動し, 筋量の調節を行うことを遺伝子改変マウスを用いた実験により明らかにした。これらの結果は, 肥満や糖尿病などの生活習慣病の予防や病態の改善を目指した創薬等に応用可能であろう。
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