抄録
ロボット技術の発達により,人間共存型のロボットの研究開発が盛んに行われている.これらのロボットがユーザと活動を共にする際,ロボットはユーザと円滑に意思疎通することが望まれる.ユーザの状態推定手法の一つとして,音声からユーザ感情を推定する手法が関心を集めている.既存の感情判別手法では,単語発話から抽出した韻律特徴や声質特徴に対応する感情の判別を行う.これらの特徴には話者の個人性も反映され,同一の感情での発話であっても話者によって特徴量の分布域が異なる.不特定話者の感情を判別する際には,特徴に含まれる個人差が判別器に強く影響を及ぼし,感情判別率の低下を引き起こす.一方で同一の話者においても異なる感情音声の特徴量が類似する場合がある.この場合,特徴空間において異なる感情音声の特微量分布が重複した領域ができ,この領域に入力された未知感情音声に対しては感情を判別できない.それらの結果,特徴量の個人差や感情分布の重複に耐性のある感情判別手法が求められている.本論文では,感情遷移時の韻律特徴の変化に基づいて感情遷移を判別する手法を提案する.話者の感情に応じて韻律特徴のモードも変化すると考え,感情遷移時に表出する韻律特徴のモード変化の検出により感情遷移を判別する.重複領域に入力された未知感情音声であっても,モード変化の有無により感情遷移の有無を判別することができる.本論文では,“関心”の感情を起点とした,“共感”,“歓喜”,“疑問”,“嫌悪”への4つの感情遷移を取り扱った.それぞれの感情遷移において韻律特徴のモード変化を抽出し,それによる感情遷移判別を試みた.正規化手法との判別率の比較により,提案手法の有用性を示した.