2011 年 52 巻 2 号 p. 105-114
本研究では,小学校で理科を苦手とする教師の小学校第5学年「もののとけかた」の授業における考察の局面をIRF三項連鎖構造の分析手法を用いて分析した。メーハン(Mehan,H.) によって開発されたIRE三項連鎖構造の分析手法を参照し. Evaluation(教師による評価)のカテゴリーをFeedback/Folow-up (フィードバック・フォローアップ)に換えて分析を行った。理科授業における考察の局面では,まずInitiation(教師の働きかけ)としてプロセス誘発やメタプロセス誘発による発問が行われる。これらの発問を通して,子どもの科学的な思考力は深まる。調査の結果,授業者は考察を深めるための方略として,Initiation (教師の働きかけ)のカテゴリーを切り替えて発問したり,Feedback/Follow-upとして再誘発を戦略的に用いたりしていることが分かった。注目すべきことは,授業者は意見・解釈やプロセスを尋ねる問いであるプロセス誘発を多用していたが,メタプロセス誘発を用いていなかったことである。Initiation(教師の働きかけ)として最も多かったのは指名・指示であった。さらに,Feedback/Folow-up (フィードバック・フォローアップ)で最も多かったのは認可であった。小学校の理科授業を専門としない教師が多く,同理科授業について様々な課題が指摘されている。本研究では,このような授業者による理科授業の考察の局面では,教師の働きかけとして,指示を減らしメタプロセス誘発による問いを意図的にデザインすることが重要となることが示唆された。