日本口腔腫瘍学会誌
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右側頸部甲状舌管嚢胞から発生したと思われる乳頭状腺癌の1例
坪井 佳世子神谷 祐二鈴木 晋也石田 洋一栗田 賢一
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2003 年 15 巻 3 号 p. 51-56

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抄録

発生部位が特徴的である甲状舌管嚢胞と側頸嚢胞は, その鑑別が比較的容易であり, いずれもまれに癌化することが知られている。
今回われわれは甲状舌管嚢胞から発生したと思われる乳頭状腺癌の1例を経験したので報告する。
患者は51歳の女性で, 3か月前より右側頸部に腫瘤を自覚していた。術前診査において, 胸鎖乳突筋の内側に40×20×15mm大の嚢胞性病変が認められた。
われわれは側頸嚢胞の臨床診断のもとに病変を摘出した。しかし, 病理組織学的検索において, 摘出された嚢胞の一部に乳頭状腺癌がみられ, 免疫組織化学的に腫瘍細胞はサイログロブリン陽性であった。また, 術後8年間原発となりうる甲状腺乳頭癌が認められなかったため, 最終的に甲状舌管嚢胞から発生したと思われる乳頭状腺癌であると診断した。サイログロブリン免疫染色は甲状舌管癌と鰓原性癌の鑑別に有用であると思われた。

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