抄録
気管支喘息などのアレルギー疾患は環境要因と遺伝要因が深くかかわって発症する多因子疾患である.アレルギー疾患の遺伝研究として現在までに候補遺伝子解析と連鎖解析が用いられているが,近年の遺伝子タイピング技術の急速な進歩により全ゲノムをくまなく解析する数十万 SNP を用いた全ゲノム関連解析が可能となってきている.小児喘息の全ゲノム関連解析により ORMDL3,CRIM1,PEX19 などが新たに疾患感受性遺伝子として同定されている.また,マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析と全ゲノム多型解析の結果を統合することにより発現に影響を与える多型についての情報を得ることも容易となっている.これらの情報および技術の進歩により複雑な多因子疾患であるアレルギー疾患の遺伝要因の解明が着実に進んでいくものと考えられる.