2025 年 39 巻 1 号 p. 80-83
最近の研究により,活性化されたT細胞上に発現が誘導されるPD-1分子の機能を抗体で阻害すると,がん細胞中のゲノム変異に起因する変異タンパク質への免疫応答が有意に回復することが分かった.このことは,裏を返せば,がん患者の体内では,PD-1によってゲノム変異由来抗原への免疫応答が強く抑制されていることを意味する.では,一体なぜ,PD-1はがん細胞に対する特異的な免疫応答を抑制しなければならないのだろうか? はたして,PD-1は人類の味方なのか,それともがん細胞の味方なのか? PD-1は免疫応答を負に制御する分子だと言われるが,一体どのような免疫応答を負に制御しているのか? これらの素朴な疑問に答えるため,本総説では,まずPD-1研究の歴史を概観し,PD-1の生理機能に関する新しい仮説を提出した上で,その妥当性を考察する.