抄録
pH 5.5, pH 4.2 およびpH 3.8 の乳幼児用イオン飲料を飲用した場合のエナメル質への影響をC57BL/ 6 マウスを用いて検討した。通常の固形食を食餌とし,各種飲料を飲用させたときにpH 5.5 の乳幼児用イオン飲料を飲用したマウスの歯は,コントロール(精製水飲用)と同様の咬耗を示した。しかしながら,pH 4.2 およびpH 3.8 の乳幼児イオン飲料を飲用したマウスでは下顎の歯に露髄を伴う重度な咬耗を認めた。さらに各種飲料を飲用させ高濃度のシュークロースを含有した粉状の食餌を与え,Streptococcus mutans 感染を行ったマウスでは,コントロール群を含むすべての実験群で第一臼歯または第二臼歯に象牙質に達する齲蝕を認め,特に糖質の含有量が他の乳児用イオン飲料より多いpH 4.2 の乳幼児用イオン飲料を飲用していたマウスに進行した齲蝕が確認できたが,他のイオン飲料および精製水飲用マウスの齲蝕スコアに有意な差は認められなかった。 頻繁にイオン飲料を飲用することでエナメル質に為害作用を生じ,さらに高シュークロース摂取下では,pH が低く糖分を多く含んだイオン飲料を飲用した場合に齲蝕が進行しやすいことが示唆された。