2017 年 55 巻 3 号 p. 390-396
iPS細胞を用いた再生医療に関する研究は急速に広がり,我が国では移植治療も開始されている。今回我々は,2010年と2014年に行った当科受診患者の保護者に対する再生医療に関するアンケート調査を比較し,再生医療に対する認知度と歯髄細胞のバンキングに対する関心度の変化を把握することを目的に本研究を実施した。
再生医療,iPS細胞という言葉の認知度は高まり,情報の広がりがうかがわれた。しかし,歯髄細胞が再生医療に利用出来ること,歯髄からiPS細胞が樹立可能であることに対する認知度は4年間でほとんど変化がなく,非常に低い割合を示した。歯髄細胞のバンキングという言葉を知っている者は2010年および2014年ともに非常に低い割合であったが,歯髄細胞のバンキングを知っている者においては,その関心度はともに高かった。
今後,歯科界からの再生医療を推進していくためには,歯および口腔由来の細胞が再生医療の有用な供給源となることを社会へ広く発信していくことが肝要であると考えられる。