小児歯科学雑誌
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総説
Streptococcus mutans の菌体表層構造と血液成分との反応が感染性心内膜炎の病原性に及ぼす影響
大継 將寿
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2019 年 57 巻 1 号 p. 15-22

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抄録

齲蝕の主要な病原細菌であるStreptococcus mutans は,グラム陽性の通性嫌気性レンサ球菌であり,感染性心内膜炎の起炎菌でもあることが知られている。これまでにS. mutans の菌体表層に,分子量約120 kDa のコラーゲン結合タンパク(Collagen­binding proteins ;CBP)を発現している菌の存在が確認されている。また,S. mutans 株陽性の感染性心内膜炎患者における摘出心臓弁からは,CBP をコードする遺伝子が高頻度で検出されている。CBP 陽性S. mutans 株の多くは,分子量約190 kDa のPA タンパクの発現を欠いており,血管内皮細胞への付着能および侵入能を増加させることに関与していることが示されている。病原細菌と血液成分との反応は様々な全身疾患において重要な病原因子とされていることから,S. mutans 株の菌体表層タンパクに着目して血液成分との反応を詳細に分析したところ,CBP 陽性PA 陰性のS. mutans 株は他の菌体表層構造をもつS. mutans 株と比較して血清に対して高い凝集能を有していることが明らかになり,特に血清中の主要な細胞外マトリックスであるIV 型コラーゲンに対して高い凝集能を有することが示された。また,血清の補体成分を不活化させることによりCBP 陽性PA 陰性のS. mutans 株の凝集反応が有意に低下することが確認された。さらに,ex-vivo 分析およびラット感染性心内膜炎モデルにおいて,CBP 陽性PA 陰性のS. mutans 株を感染させた心臓弁では顕著な細菌塊の形成を認めたことから,CBP 陽性PA 陰性のS. mutans 株は血清との反応により感染性心内膜炎の病原性に大きく関与している可能性が示唆された。

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© 2019 日本小児歯科学会
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