抄録
頭蓋内腫瘍中に歯牙が含まれている報告はきわめて稀である。
本症例は8歳男児で,頭部外傷後の頭部X線単純写真上,頭蓋内に石灰化陰影が認められたため兵庫県立こども病院脳神経外科を受診した。諸検査により頭蓋内奇形腫と診断された。腫瘍摘出術は腫瘍が全摘出不能な位置にあったため行われなかった。処置としては頭蓋内圧亢進症状が出現してきたので,減圧の目的で脳室心耳吻合術(V-P shunt)のみを行った。以後の患児の状態は緩慢な経過をとり,終局的には植物状態となり11歳9カ月で死亡した。
剖検所見では腫瘍は第III脳室底に附着し,鶏卵大の大きさで重量は約40g,肉眼的に歯牙様硬組織,骨様硬組織などがみられた。
本腫瘍の病理組織学的所見は多彩な像を呈し,歯牙をはじめ種々の組織を含む充実性組識と大小多数の嚢胞とから構成されていた。