抄録
可視光線重合型覆髄剤(VLC Dycal)の臨床使用の適否について調べるため,FDIの歯科材料毒性試験法である寒天重層法を一部改変した方法を考案してヒト歯肉由来線維芽細胞を用いて組織培養にて実験した。比較検討のため可視光線重合型コンポジットレジンのP - 3 0 とS i l u x ( 3 M 社製) そしてD y c a l ( C a u l k 社製) と水酸化カルシウム単味を使用した。その結果,可視光線重合型コンポジットレジンの細胞毒性はP-30が30秒,Siluxが50秒の光照射時間で細胞毒性が消失した。しかし,可視光線重合型覆髄剤(VLC Dycal)の細胞毒性は60秒の光照射でも消失しなかった。その細胞毒性の大きさは水酸化カルシウムとDycalの細胞毒性と同じであった。これは可視光線重合型覆髄剤(VLC Dycal)が窩洞内に裏層された場合に,光照射によって重合し,レジンの毒性が歯髄刺激に関与しない程度にまで減少して,次にカルシウムが溶出して二次象牙質の形成を促すように作用することを示唆している。