小児歯科学雑誌
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上顎正中埋伏過剰歯を有する象牙質形成不全症(Shields II型)の患児の歯科治療と歯科的所見
松本 敏秀落合 聡野中 和明井口 享佐々木 康成Jong-Hyun Bae中田 稔
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1994 年 32 巻 3 号 p. 601-608

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抄録

象牙質形成不全症(Shields II型)は,歯の硬組織のうち中胚葉由来である象牙質の形成不全により発生する先天異常のひとつである.その遺伝形式は常染色体優性遺伝であり,乳歯および永久歯ともに罹患する.歯冠は,透明感のあるオパール様の色調を呈し,歯髄腔は石灰化物により漸次閉鎖されていく.またエナメル質が剥離しやすい傾向にあるため,いったん露出した象牙質は容易に咬耗し,最終的には歯髄感染を惹起しやすい.今回我々が遭遇した4歳0ヵ月の女児では,上顎正中部に逆性過剰埋伏歯を1歯有していたが,他にも次のような所見が認められた.
1)すべての乳歯は,歯冠の崩壊が著明であった.可及的に全部性歯冠修復を施した後,咬合高径の挙上も兼ねたオーバーデンチャー式の可撤保隙装置を装着した.
2)上顎永久中切歯の萌出に伴い下顎中切歯との間で交叉咬合となり,この外傷性咬合が下顎切歯歯肉の退縮を引き起こした.
3)交叉咬合の治療に先立ち,6歳1ヵ月時に上顎正中過剰埋伏歯を摘出した.摘出した過剰歯の肉眼的,エックス線学的および組織学的所見より,同過剰歯も象牙質形成不全症に罹患していることが明かとなった.
4)上顎歯列に指様弾線付きリンガルアーチを装着し,上顎中切歯を唇側に傾斜させ,切歯部交叉咬合を改善した.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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