小児歯科学雑誌
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新潟大学歯学部小児歯科外来における先天性心疾患を持つ小児の実態調査
阪田 美智江長谷川 順子大島 邦子富沢 美恵子野田 忠
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1994 年 32 巻 3 号 p. 624-633

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抄録

先天性心疾患を持つ小児が歯科外来を受診する機会は決してまれではなく,その実態を把握することは,これからの患児の口腔管理を行ううえで重要なことである.
著者らは昭和54年9月1日から平成5年12月31日までに,新潟大学歯学部小児歯科外来を受診した先天性心疾患を持つ患児220名についてその実態を調査し,以下の結論を得た.
1)先天性心疾患を持つ新患患者は,全患者に対して1.7%を占めた.初診時年齢は3,4歳がピークで,平均は5.6歳であった.
2)66.8%は医療機関からの紹介患者で,医学部胸部外科からの,開心術前の感染源除去としての齲蝕治療の依頼が最も多かった.また,開心術前の来院患者では,開心術まで2週間以内という場合が46.2%であった.
3)病型で最も多かったのは心室中隔欠損症であった.合併症を持つ患児は31.4%おり,Down症候群,精神発達遅滞などが多かった.
4)初診時の齲蝕罹患率は高く,一人平均df歯数は各年齢とも高い値を示した.
5)歯科処置の内容は,保存修復処置が最も多かったが,抜歯,歯髄処置も多くみられた.全処置終了した患児は73.2%で,平均処置歯数は7.3本,平均治療回数は4.3回であった.
6)定期診査の来院率は55.0%であった.
以上より先天性心疾患児に対して,医療機関との連携のもとに,早期から口腔健康管理を行うことが必要で,口腔健康管理の継続に一層の努力が求められることが明かになった.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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