抄録
口腔習癖と異常嚥下癖を原因とする両顎前突が認められた2症例を対象に,混合歯列期から永久歯咬合に至るまで可撤装置を用いて咬合管理を行ったので,その経過について報告する.
症例1:8歳0か月時に咬爪癖,咬唇癖,異常嚥下癖の除去と両顎前突の改善を目的としてバイトプレートを装着したが,嚥下時に舌がプレーン部を越えて突出するため,8歳9か月時にバイトプレーンにフェンスを付与した.2年11か月間の装置の使用により習癖が除去され,咬合が改善した.その後1年9か月間,保定装置を使用した.
症例2:8歳11か月時に異常嚥下癖の除去と両顎前突の改善を目的として,フェンス付バイトプレートを装着した.11歳7か月時に習癖が消失したためフェンスを除去し,4年1か月間の装置の使用により咬合が改善した.その後,保定装置を装着し,経過観察を行っている.本報告の2症例は,フェンス付バイトプレートの使用により異常嚥下癖を除去し,舌の異常な動きを制御して,口腔周囲筋との調和が得られるようになったため,上下顎前歯の歯軸傾斜が改善し,機能的および審美的に満足できる永久歯咬合が得られたものである.