小児歯科学雑誌
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食塊の物性が嚥下閾に与える影響
阿部 真之介
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2001 年 39 巻 3 号 p. 704-711

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抄録

本研究は唾液分泌量が減少すると咀嚼時間が延長することに着目し,正常唾液分泌時と唾液分泌抑制時の1.咀嚼時間,咀嚼回数,2.食塊水分量,3.食物の粉砕率,4.食塊のテクスチャー特性を測定し,どのような因子が嚥下閾に関与しているのかを明らかにすることを目的に行った.成人6名を対象とし,被験試料にはレトルトの米飯を用いた.咀嚼試料を通常どおり各被験者に咀嚼,嚥下させ,咀嚼時間および咀嚼回数を求め,これより咀嚼リズムを算出した.被験者に前述のリズムで試料を咀嚼させ,得られた食塊を真空凍結し,嚥下時の食塊水分量(%)を測定した.食物の粉砕率については,食塊を10meshで節分し,乾燥全重量に対する篩上に残留した試料の重量を計測した.テクスチャー特性の測定にはテクスチャーアナライザー®,データの解析にはテクスチャーエキスパート®を使用し,double-bitetestにて行った.
その結果全ての被験者において,唾液分泌抑制時には,咀嚼時間の延長,咀嚼回数の増加,嚥下時食塊水分量の減少,嚥下時の食物粉砕率の増加がみられた.また,被験者において,正常唾液分泌時と唾液分泌抑制時のあいだで,付着性には有意な差を認めなかった.以上のことから,嚥下閾は食物粉砕率のみに左右されるのではなく,食塊表面の付着性に影響を与える唾液中の水分によっても大きく影響をうけることが示唆された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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