2006 年 44 巻 3 号 p. 439-443
平成4年から平成12年までに昭和大学歯科病院小児歯科を受診し,外傷により上顎乳中切歯を受傷後,中切歯萌出まで経過観察を行った100名157歯を対象に乳歯外傷が後継永久歯の萌出時期に与える影響について調査し検討を行った。下顎側切歯および第一大臼歯の萌出時期を参考に,萌出遅延,早期萌出の基有無を判定した。
その結果,男女比は1.7:1と男児が多く,平均年齢は3歳3か月,年齢分布は2~4歳が多かった。低年齢の対象が少ないのは,後継永久歯萌出までの期間が長期に亘るため,症状にかかわらず長期の経過観察が必要であることが十分理解されず,経過観察期間中に保護者の乳歯の外傷歯が後継永久歯に与える影響についての意識が低下し,来院を中断することが多いことに起因すると推察された。
受傷側の上顎永久中切歯の萌出時期異常は7.6%に認められ,早期萌出よりも萌出遅延が多く認められた。また,低年齢の方が萌出時期異常を多く認め,特に,1歳児は18.2%に認められた。受傷状態別では,埋入した症例の20%に萌出時期異常を認めた。エナメル質破折の1歯にも萌出遅延が認められた。
以上より,受傷状態に限らず,乳歯外傷は受傷歯の後継永久歯萌出まで定期管理を十分行う必要性が示唆された。