抄録
68歳女性.意識障害にて来院.来院時意識レベルJCS 20.アンモニア365と上昇.HCV陽性であり,肝硬変・肝性昏睡の診断で入院した.CTにて下腸間膜静脈から下大静脈に流入する肝外門脈体循環短絡路を認めた.保存的加療で意識レベルは一時的に改善するも,再増悪を繰り返したため,短絡路塞栓術を行う方針とした.下大静脈への流出血管が細く,カテーテル挿入困難が予想されたため,経皮経肝的にアプローチした.門脈造影にて下腸間膜静脈より静脈瘤が形成され,Retzius静脈短絡路を介し下大静脈に流入していることを確認後.静脈瘤の遠位側にコイルを12個使用し,流速に低下を認めたため,下腸間膜静脈の肝側にてバルーンを拡張し,50%グルコース20ml,エタノール10ml,5%ethanolamine oleate 10mlなどを注入し停滞を認めたため終了した.術後CTにて静脈瘤への血流がないことが確認され.その後脳症はなく経過した.Retzius静脈短絡路に対する経皮経肝的塞栓術によって脳症が改善し得た症例であり報告する.