日本門脈圧亢進症学会雑誌
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18 巻, 1 号
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Editorial
原著
  • 和久井 紀貴, 高山 竜司, 金川 武徳, 向津 隆規, 一森 美生江, 中野 茂, 永井 英成, 五十嵐 良典, 住野 泰清
    2012 年 18 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    【目的】Sonazoid造影US(SUS)における肝実質のperfusionの違いが,門脈圧亢進症により惹起される合併症発現率の予測に有用か否か明らかにする.
    【対象と方法】対象はSUSを施行したC型慢性肝疾患253例.超音波装置は東芝AplioXGを用いSonazoid静注後30秒間,右肋間走査で肝S5領域と右腎の染影動態を記録した.記録した動画でParametric Imagingを作成し,肝実質のperfusionをカラー表示下で検討した.
    【成績】肝実質のperfusionが門脈主体であるもの(Pパターン:P),門脈と肝動脈の両方であるもの(APパターン:AP),肝動脈主体であるもの(Aパターン:A)の3つに分類することができた.検討の結果,食道静脈瘤(+)例,脾腫(+)例はPと比べ,AP,Aで有意に増加した(p<0.01).また腹水(+)例はPでは認められず,AP,Aで有意に増加した(p<0.01).
    【結論】Parametric Imagingは門脈圧亢進症により惹起される合併症発現率の予測に有用であった.
  • Takayuki Nishi, Hiroyasu Makuuchi, Soji Ozawa, Hideo Shimada, Osamu Ch ...
    2012 年 18 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    From 1986 through 2007, endoscopic injection sclerotherapy (EIS) was performed in 67 patients with gastric varices. The total number of treatment sessions was 213: emergency treatment, 16; elective treatment, 125; and prophylactic treatment, 72. Hemostasis was successfully achieved by EIS with Histoacryl blue® in all patients who received emergency treatment. Good outcomes were also obtained in patients who underwent elective treatment and prophylactic treatment. The rate of recurrent bleeding was low.
    Esophageal varices may occur together with gastric varices. These varices serve as a collateral shunt from the portal venous system to the azygos vein and superior vena cava and drain into the left renal vein and inferior vena cava through the adrenal vein. Therefore, gastric varices should be treated at the same time as esophageal varices whenever possible.
    Sclerotherapy for gastric varices should be performed cautiously, bearing in mind that some varices have a rapid flow rate and large blood volume and that that blood flow cannot be blocked with an endoscopic balloon.
    EIS with sclerosants and Histoacryl is usually performed for the emergency treatment of actively bleeding gastric varices. EIS is also useful as follow-up treatment to ensure complete eradication of varices. It is important to completely eradicate gastric varices. The goals of treatment for gastric varices are complete eradication and the prevention of recurrence, similar to esophageal varices.
  • 小嶋 清一郎, 荒瀬 吉孝, 高清水 眞二, 加川 建弘, 白石 光一, 峯 徹哉, 小泉 淳, 幕内 博康, 渡辺 勲史
    2012 年 18 巻 1 号 p. 26-35
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    過去9年間に胃静脈瘤の治療を受けた患者99例を対象として,胃静脈瘤に対する治療効果を検討した.基礎疾患はC型肝硬変が34%,アルコール性肝硬変が29%,B型肝硬変が10%であった.胃静脈瘤の治療法は内視鏡が56%で最も多く,interventional radiology; IVRが34%,両者の併用治療が10%であった.治療時期は予防例が51%で最も多く,緊急例が36%,待期例が13%であった.治療後の胃静脈瘤の消失率は内視鏡治療で94.5%,IVR治療で91.2%と両者とも良好な成績であった.予防例では緊急・待期例に比して胃静脈瘤の無再発期間が有意に長く(p<0.05),内視鏡治療群に比較してIVR治療群の無再発期間が有意に長い結果であった(p<0.05,ハザード比5.8).輸血を要した症例では不要の症例に比較して無再発期間が有意に短いことが明らかとなった(p<0.05,ハザード比4.2).生存期間は肝細胞癌合併群で有意に短く(p<0.0001,ハザード比11.5),肝予備能不良例で有意に短い結果であった(p<0.0001,ハザード比7.8).出血例では治療方法として内視鏡とIVRのどちらを選択してもよいことが明らかとなった.予防治療としては肝予備能が悪化しないうちにIVRで治療することが長い無再発期間を得るために必要であることが示された.
臨床研究
  • 今井 幸紀, 中澤 学, 近山 琢, 渡邊 一弘, 安藤 さつき, 水野 芳枝, 吉野 廉子, 菅原 通子, 濱岡 和宏, 稲生 実枝, 持 ...
    2012 年 18 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    孤立性胃静脈瘤破裂に対してα-cyanoacrylate monomer(CA)注入による内視鏡的止血術を施行した症例の経過をもとに,同止血法の有用性と追加治療の妥当性について検討した.胃静脈瘤破裂と診断した26例に対し,75%CAを胃静脈瘤に注入した.その後,胃腎短絡路があればB-RTOを,なければEO+CAによるEISを施行した.Child-Pugh grade Cの場合はその時点では追加治療を施行しなかった.CAの注入後24例(92%)で止血が得られ,他の2例は翌日のCA再注入で止血が得られた.その後18例でB-RTOを施行した.B-RTO不成功の2例と胃腎短絡路のない3例にEISを追加した.救命率は96%で,胃静脈瘤からの再出血はなく,B-RTOまたはEISを追加した例では胃静脈瘤の再発はない.胃静脈瘤破裂に対するCAによる内視鏡的止血の成績は良好である.胃腎短絡路の有無と肝機能から判断した追加治療の方針は妥当であると考えられた.
  • 田尻 和人, 河合 健吾, 時光 善温, 安村 敏, 峯村 正実, 高原 照美, 杉山 敏郎, 長田 拓哉, 塚田 一博
    2012 年 18 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    今回我々は脾臓摘出術(脾摘)を施行しインターフェロン(IFN)を導入した1型高ウイルス量のC型肝硬変の7症例をretrospectiveに解析した.脾摘はおおむね安全に施行でき,全例で血小板数の改善が得られ,リバビリン併用のIFN療法が導入可能であった.しかし,IFN療法の効果はSVRが16.6%と満足の得られるものではなく,肝細胞癌(Hepatocellular carcinoma,HCC)発症によるIFN治療中止例が33.3%,無効例が33.3%にみられた.IFN療法を目指した脾摘を考慮する際には,HCCの十分なサーベイランスと,IL28b SNPs解析などのIFN治療効果予測が必要であると考えられた.また,好中球減少の脾摘による改善効果は,肝疾患が進行しているほど限定的である可能性があり,IFN療法の際に注意が必要であると考えられた.
症例報告
  • 三枝 善伯, 新後閑 弘章, 前谷 容
    2012 年 18 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    68歳女性.意識障害にて来院.来院時意識レベルJCS 20.アンモニア365と上昇.HCV陽性であり,肝硬変・肝性昏睡の診断で入院した.CTにて下腸間膜静脈から下大静脈に流入する肝外門脈体循環短絡路を認めた.保存的加療で意識レベルは一時的に改善するも,再増悪を繰り返したため,短絡路塞栓術を行う方針とした.下大静脈への流出血管が細く,カテーテル挿入困難が予想されたため,経皮経肝的にアプローチした.門脈造影にて下腸間膜静脈より静脈瘤が形成され,Retzius静脈短絡路を介し下大静脈に流入していることを確認後.静脈瘤の遠位側にコイルを12個使用し,流速に低下を認めたため,下腸間膜静脈の肝側にてバルーンを拡張し,50%グルコース20ml,エタノール10ml,5%ethanolamine oleate 10mlなどを注入し停滞を認めたため終了した.術後CTにて静脈瘤への血流がないことが確認され.その後脳症はなく経過した.Retzius静脈短絡路に対する経皮経肝的塞栓術によって脳症が改善し得た症例であり報告する.
  • 新井 弘隆, 豊田 満夫, 高山 尚, 阿部 毅彦
    2012 年 18 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    今回,食道静脈瘤に対して内視鏡的加療を施行し,その後破裂した胃静脈瘤に対するHassab手術後に発達・破裂し,経門脈的塞栓術にて治療し得た直腸静脈瘤の2例を経験した.1例は経皮経肝的塞栓術(percutaneous transhepatic obliteration:PTO)を施行し,1例は門脈本幹の血栓と海綿状血管増生(cavernomatous transformation)を有することから,経皮経肝的アプローチは困難と考え,経回腸静脈的塞栓術(transileocolic vein obliteration:TIO)を施行した.2例とも再出血をきたすことなく,止血を得た.静脈瘤治療後の血行動態の変化を考える上で貴重な症例と考えられた.
第18回日本門脈圧亢進症学会総会 司会総括
第14回B-RTO研究会記録
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