日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
Print ISSN : 1344-8447
ISSN-L : 1344-8447
臨床研究
肝硬変症における脾摘術後の門脈血栓予防に対するアンチトロンビン製剤の有用性についての検討
川中 博文江頭 明典伊藤 心二東 貴寛枝川 愛松原 裕富野 高広江藤 祥平永田 茂行橋本 健吉内山 秀昭奥山 稔朗立石 雅宏是永 大輔竹中 賢治
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 19 巻 2 号 p. 113-119

詳細
抄録
肝硬変症における脾摘術後門脈血栓予防のためのAT-III 製剤の投与基準について検討した.(研究1) Ann Surg 2010;251:76-83で報告した症例を再検討し,術前AT-III値をcut-off値として門脈血栓予測のROC曲線を作成した.AT-III値61%で感度100%,特異度67%であり,当院におけるAT-III製剤投与基準の暫定値を術前AT-III値60%以下とした.(研究2) 08年4月から11年3月までに腹腔鏡下脾摘術を施行した肝硬変53例を対象とし,術前AT-III値が60%以下の症例に対して,術翌日よりアンスロビンP1500単位/日を3日間投与した.(1)AT-III非投与群では16例中7例(44%)に門脈血栓が発症したが,投与群では37例中3例(8%)のみであった(p<0.01).(2)AT-III非投与群において,60%<AT-III<70%では,3例中3例(100%)に血栓が発症した.AT-III≧70%では,脾静脈径10mm以上の6例中4例(67%)に血栓が発症したが,脾静脈径10mm 未満では血栓は認めなかった.以上より,AT-III製剤の投与基準を術前AT-III値70%以下または脾静脈径10mm 以上とすることで,門脈血栓が予防できると考えられた.
著者関連情報
© 2013 日本門脈圧亢進症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top