2020 年 26 巻 4 号 p. 263-268
症例は69歳男性.2015年5月腹痛を主訴に来院し,左側門脈圧亢進症を伴った膵体部の神経内分泌腫瘍と診断した.切除を試みたが腫瘍進展に伴い脾動脈根部が確保できず非切除となった.以降TS1+放射線照射を皮切りに,Everolimusおよび5-FU+Streptozocinを2018年1月まで施行.経過中に難治性の胃前庭部毛細血管拡張症(gastric antral vascular ectasia:以下GAVE)を合併し,計16回のargon plasma coagulation(APC)を要するなど出血のコントロールに難渋した.2018年3月の画像評価にて,腫瘍縮小が得られ切除可能と判断し,膵体尾部脾切除術を行った.門脈圧亢進により剥離操作は難渋したものの,合併症なく第27病日に退院した.術後3か月後に施行した上部消化管内視鏡検査ではGAVEの著明な改善が認められ,術後17か月無再発である.