2021 年 27 巻 2 号 p. 163-167
難治性腹水に対する治療として腹水濾過濃縮再静注法 (CART) を施行する場合がある.当院におけるCART施行症例の患者背景と予後の関連を検討した.当院では2012年1月から2019年3月までに利尿剤内服後も改善が得られず大量腹水穿刺を要し,主治医が適応と認めた119例にCARTを施行した.内訳は,慢性肝不全が腹水の原因となった肝性腹水症例は39例,癌性腹膜炎を含めた悪性疾患に腹水が起因する癌性腹水症例は80例である.主な合併症は発熱22例,悪心嘔吐8例でいずれも軽度であった.肝性腹水症例は,予後良好群は有意に若年 (57.3±15.6対67.7±10.0歳),血清ビリルビン低値 (1.5±1.1対2.5±1.5 mg/dl),血清Na濃度高値 (137±4対131±7 mEq/L) であった.CART開始時の血清Na濃度125 mEq/L以下の症例の生命予後はいずれも70日未満であった.