門脈肺高血圧症 (Portopulmonary hypertension:PoPH) は慢性肝疾患の呼吸器合併症のうちで比較的頻度が高いが,自覚症状に乏しく見過ごされる症例もあると推定される.今回門脈圧亢進を有する肝硬変92例を対象に,胸部X線での古典的評価に基づき肺高血圧合併の可能性を検討した.全症例の検討では右下行肺動脈 (RDPA) で53例 (57.6%),左右の上葉肺動脈外側間距離/胸郭比 (PL/T) で18例 (19.6%) が基準値以上であった.また全体で13例 (14.1%) が両者を同時に満たしたが,Child-Pugh AとChild-Pugh Bの間に有意差は認めなかった (4/42:9.5% vs. 9/50:18.0%, p=0.245).門脈圧亢進を有する肝硬変では,肝予備能の程度にかかわらず潜在的に肺高血圧症を合併する例が一定数あることが示唆された.
抄録全体を表示