日本門脈圧亢進症学会雑誌
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27 巻, 2 号
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原著
  • 榎本 平之, 会澤 信弘, 西村 貴士, 飯島 尋子
    2021 年 27 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    門脈肺高血圧症 (Portopulmonary hypertension:PoPH) は慢性肝疾患の呼吸器合併症のうちで比較的頻度が高いが,自覚症状に乏しく見過ごされる症例もあると推定される.今回門脈圧亢進を有する肝硬変92例を対象に,胸部X線での古典的評価に基づき肺高血圧合併の可能性を検討した.全症例の検討では右下行肺動脈 (RDPA) で53例 (57.6%),左右の上葉肺動脈外側間距離/胸郭比 (PL/T) で18例 (19.6%) が基準値以上であった.また全体で13例 (14.1%) が両者を同時に満たしたが,Child-Pugh AとChild-Pugh Bの間に有意差は認めなかった (4/42:9.5% vs. 9/50:18.0%, p=0.245).門脈圧亢進を有する肝硬変では,肝予備能の程度にかかわらず潜在的に肺高血圧症を合併する例が一定数あることが示唆された.

臨床研究
  • 芳賀 祐規, 齊藤 正明
    2021 年 27 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    難治性腹水に対する治療として腹水濾過濃縮再静注法 (CART) を施行する場合がある.当院におけるCART施行症例の患者背景と予後の関連を検討した.当院では2012年1月から2019年3月までに利尿剤内服後も改善が得られず大量腹水穿刺を要し,主治医が適応と認めた119例にCARTを施行した.内訳は,慢性肝不全が腹水の原因となった肝性腹水症例は39例,癌性腹膜炎を含めた悪性疾患に腹水が起因する癌性腹水症例は80例である.主な合併症は発熱22例,悪心嘔吐8例でいずれも軽度であった.肝性腹水症例は,予後良好群は有意に若年 (57.3±15.6対67.7±10.0歳),血清ビリルビン低値 (1.5±1.1対2.5±1.5 mg/dl),血清Na濃度高値 (137±4対131±7 mEq/L) であった.CART開始時の血清Na濃度125 mEq/L以下の症例の生命予後はいずれも70日未満であった.

症例報告
  • 田中 千賀, 前田 弘彰
    2021 年 27 巻 2 号 p. 168-173
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    症例は60歳代男性,主膵管型膵管内乳頭粘液性腫瘍術後の再発に対し化学療法が施行されたが,病勢が進行しベスト・サポーティブ・ケア (best supportive care:BSC) 中であった.フォローCTで胃静脈瘤が指摘され経過観察されていたが,増大傾向および上部消化管内視鏡検査で発赤所見を認めたため治療の適応となった.再発腫瘍により脾静脈が閉塞しており左側門脈圧亢進症に伴う胃静脈瘤と診断し,胃静脈への血流を減少させる目的で部分的脾動脈塞栓術が施行された.その後静脈瘤からの出血なく,1年の生存期間を得た症例を経験したので報告する.

  • 西村 守
    2021 年 27 巻 2 号 p. 174-177
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    症例は94歳,女性.腹部膨満と便秘,低酸素血症を主訴に当院へ紹介となった.来院後行った腹部CTで多量の腹水貯留を認め,精査加療目的で入院となった.入院後の腹部造影CT検査では肝辺縁は凹凸があり,肝硬変のパターンであり,腹水のほか両側胸水,無気肺も認めた.また,上腸間膜静脈に限局的に2.5 cm大の造影効果を持つ結節があり上腸間膜静脈瘤と考えられた.腹水に対しては細胞診も行うも腫瘍細胞は認めなかった.肝硬変に伴う腹水と診断し利尿剤などの保存的加療にて軽快した.上腸間膜静脈瘤に関しては手術などの侵襲度の高い治療となることが予想され,年齢なども考慮し経過観察の方針となった.

  • 古山 準一, 檜森 亮吾
    2021 年 27 巻 2 号 p. 178-183
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    症例は,58歳,女性.26歳時より,慢性関節リウマチにて前医でTocilizumab,Methotrexateを含む治療中.X-2年9~10月 腹水貯留にて当院に入院.腹水は漏出性であり門脈圧亢進症が考えられたが遠肝性側副血行路は認めなかった.MTXは中止した.X-1年10月 食道静脈瘤を認め,X年5月 食道静脈瘤に対して予防的EIS施行.EVISにて,5%EOIが食道静脈瘤を下行した後,肝内門脈左枝が描出され注入を中止.その後再注入すると肝内門脈左枝の造影が強まり,同時に左胃静脈を下行し門脈本幹への上行が確認され5%EOI注入を中止.後日,肝生検を施行し前肝硬変症 (非B非C型) と診断された.肝内門脈枝より直接食道・胃静脈瘤へ行く側副血行路の報告は稀である.今回,我々は,食道静脈瘤に対するEIS時,肝内門脈左枝が描出された1症例を経験したので報告した.EIS時には注意を要すると考えられた.

  • 田上 真, 中西 孝之, 荒木 寛司
    2021 年 27 巻 2 号 p. 184-189
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    非代償性肝硬変においては様々な合併症が認められる.肝性脳症はその原因として,肝外に門脈大循環シャントの発達を認めることが多い.本症例は門脈大循環シャントとして脾腎シャントと巨大な傍臍静脈シャントを認めた.肝性脳症改善を目的にバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術 (Baloon-occluded retrograde transvenous obliteration) (以下BRTO) を試み,脾腎シャントは施行できず,傍臍静脈シャントに対して施行した.画像上シャントの閉塞や狭細化は認めず閉塞不成功であったが,術後血中アンモニア値も低下し,肝性脳症の改善もみられた.その後の肝動脈造影で肝動脈に肝内動脈瘤を介する肝動脈-門脈シャント (Arterio-portal fistura) (以下APシャント) の存在を認め傍臍静脈シャントの発達の原因と考えた.肝動脈瘤コイル塞栓術を施行し,APシャント血流の低下を認めた.その2週後のCTでははっきりしなかったが,7週後のCTでは傍臍静脈シャントの狭細化を認めた.BRTO後肝性脳症は認めておらず,コイル塞栓術以後はより安定して健在である.

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