日本門脈圧亢進症食道静脈瘤学会雑誌
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高度な脾機能亢進症を伴う食道胃静脈瘤に対する直達術の意義
黒川 剛原田 明生野浪 敏明稲垣 均中尾 昭公高木 弘
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1997 年 3 巻 2 号 p. 175-178

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抄録

胃食道静脈瘤に対する直達術の意義を, とくに脾機能亢進症の観点から検討した.当科で経験した直達術施行症例中, 肝癌を有しない150例を対象とし, 術中の門脈血行動態, 血液生化学検査, 静脈瘤の再発の有無, 生存率を解析した.脾重量と脾摘後の門脈血流量の低下はよく相関し, 巨脾の症例ほど脾摘により門脈圧を低下させることができると考えられた.術直後, 術後長期ともにKICG値は術前に比較して低下せず, 手術による肝機能の低下はみられなかった.術後の血小板は著明に上昇し, この効果は長期に持続した.脾機能亢進の程度を術前の血小板数により3群に分類し, 術後の合併症, 長期予後を比較したところ, 著明な脾機能亢進群であっても, その他の群と同程度の成績であった.この結果, 高度な脾機能亢進症例であっても手術は安全に施行でき, 脾腫による圧迫症状や, 脾機能亢進症状を解除できるという意味で, 直達術は有用であると考えられた.

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© 日本門脈圧亢進症学会
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