抄録
門脈の分枝変異は20%以下に認められる.門脈分枝変異を伴う肝線維症に発症した肝細胞癌 (HCC) に門脈本幹腫瘍栓を形成し, 治療が奏効した症例を報告する.症例は78歳, 男性.1年前にHCCが疑われたが本人の希望にて放置していたところ, 腫瘍の増大をきたし入院した.肝機能はChild-Pughスコア6点, grade A, 肝障害度Aであった.AFPは3090ng/ml, PIVKA-IIは501AU/mlと高値で, HBs抗原およびHCV抗体は陰性であった.画像診断では肝S6のHCCより門脈本幹から独立分岐したP6を介し直接門脈本幹内へ伸展するportal venous tumor thrombus (PVTT) (Vp4) の形成が認められた.PVTT (Vp4) に対し自己凝血塊を用いた選択的リピオドールTAE (selective TAE;S-TAE) を実施し, その後PVTTを含む肝拡大後区域・右尾状葉切除を施行した.切除標本の病理組織学的所見では背景肝は肝線維症で, 癌部は低分化・索状型HCCであり, PVTTの大部分は壊死に陥っていた.術後AFPおよびPIVKA-IIは正常域に速やかに低下し, 術後6カ月現在無再発生存中である.門脈分枝変異を伴う症例では早期にVp4をきたすことがあり, 慎重な経過観察が必要である.Vp4に対するS-TAEはPVTTの制御に加え非担癌領域の代償性肥大も得られることから, 外科的治療の前治療としても有用である.