2017 年 54 巻 3 号 p. 262-266
Brentuximab vedotin(BV)は,抗CD30抗体薬物複合体であり,CD30陽性の難治性未分化大細胞性リンパ腫(anaplastic large cell lymphoma: ALCL)への有用性が報告されている.再発ALCLに対してBVを投与し寛解に至ったが,薬剤性膵炎を来した症例を経験したので報告する.症例は14歳女児で,初発時に中枢神経病変を有するstage 4のALCLであった.初期治療で寛解を得られたが,化学療法終了後約1ヵ月で再発した.再発ALCLに対してBVを投与したところ奏効し,初回投与後に再寛解を得たが,BV4回目の投与後に急性膵炎を発症した.ALCLの再発兆候は認められず,BVによる薬剤性膵炎と判断した.BVは中止し,vinblastineによる維持療法を行いながら膵炎からの回復を待って,第二寛解期で臍帯血移植を施行した.BVは有害事象が比較的少ない分子標的治療薬とされているが,合併症として急性膵炎が散見されており,従来考えられていたより慎重な観察が必要と思われる.