抄録
【緒言】小脳悪性黒色腫の延髄播種病変に起因する難治性吃逆に対して,呉茱萸湯が奏効した症例を経験した.【症例】症例は54 歳の男性.小脳悪性黒色腫の延髄播種病変に対し化学療法を行い経過観察していたところ,徐々に増大した延髄病巣が原因と考えられる持続性難治性の吃逆を発症した.吃逆に対して一般的に使用されている中枢性筋弛緩薬のバクロフェンや制吐薬のメトクロプラミド,抗精神病薬のクロルプロマジン,抗てんかん薬のクロナゼパムなどの西洋薬を試みたが効果は認められなかった.そこで,漢方薬の中でも吃逆の第1 選択薬とされることが多い芍薬甘草湯を試みたが改善せず,呉茱萸湯に転方した.呉茱萸湯投与2 日目に吃逆は消失し,随伴する頭痛も改善した.患者は,約1 年後になる現在も呉茱萸湯を内服中で,吃逆の再発はない.【結論】西洋薬が無効,あるいは十分な効果が得られない病態に対して,漢方薬の使用は有用な選択肢の1 つである.