主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:胎児循環と新生児循環:新生児遷延性肺高血圧症をめぐる諸問題
回次: 15
開催地: 神奈川県
開催日: 1997/01/24 - 1997/01/25
p. 59-64
はじめに
出生直後の新生児は自ら呼吸を始める。このとき肺は膨らみ,肺への血流量は急激に増加する。胎児期では心拍出量の8%程度であったものが,一挙に10倍になる。このドラマチックな肺血流量の増加はさまぎまなメカニズムによってもたらされる。このなかで最近注目されているのが一酸化窒素(NO)である。まずKinsellaら1)によって羊胎仔の肺動脈血流量がNOによってdose-dependentに増加することが初めて報告された。またCornfieldら2)は人工換気による肺動脈血流量の増加がNO合成阻害剤のL-NAによって抑制されることを見出した。これらの結果から,肺動脈血流量の増加に対するNOの役割が重要視されるようになった。またFinemanら3)の新生仔を用いた実験で,低酸素やトロンボキサンA2による肺動脈圧の増加がNOで抑制されることが判明し,ヒトの新生児の呼吸障害の治療に対するNOの有用性が示された。
今回の実験は妊娠ヤギを用いて子宮内で胎仔を人工換気して,出生時の状態をシミュレートし,このときの肺動脈血流量の変化とNOの関与を調べるのが目的である。