周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第15回
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
はじめに
  • 西島 正博
    p. 3
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     第15回日本周産期学会は,1月24日~25日にパシフィコ横浜国際会議場で開催されました。横浜での開催はちょうど10年前の第5回シンポジウムに次いで2度目で,再度皆様方を迎えることができ光栄でした。シンポジウムの前夜には懇親会が例年行われてきましたが,常任幹事会のお許しを得て,懇親会の前に特別講演を組ませていただきました。演者はロマ・リンダ大学(カリフォルニア)のCharles A. Ducsay教授で,テーマはFetal-Maternal Communication and the Initiation of Laborでした。

     1月25日(土)には,9:00~16:30に昼休みをはさんで,シンポジウムが行われました。テーマは「胎児循環と新生児循環―新生児遷延性肺高血圧症をめぐる諸問題」で,午前中にその原因・病態,午後にその治療について発表・討論が行われました。毎年のシンポジウムテーマは会員からのアンケートによる希望テーマなどから,そのころの周産期に関わる問題で,その時点でのコンセンサスが得られそうなものが選定されてきました。今回のテーマは2年前に決められ,シンポジストは応募者の中から1年半ほど前に10人にしぼられると同時に,2題の関連演題が選ばれました。

     このシンポジウムでは戸苅創先生(名古屋市立大学小児科助教授)と岡井崇先生(愛育病院副院長)のお二人に午前・午後の部を通じて座長をお願いして,わかりやすくまとめていただいたことに感謝します。冒頭に,座長の戸苅先生から新生児遷延性肺高血圧症(PPHN:Persistent Pulmonary Hypertension of the Neonate)の定義と概念についてレビューしていただき,シンポジストと聴衆が共通の認識を持って討論できるようにしていただきました。

     本学会学術集会には会員でなくても参加することができますので,周産期学に関心がある方は是非毎年ご参加ください。「周産期学シンポジウム」のバックナンバーも購入可能です。

     本シンポジウムを企画・立案していただきました学術担当常任幹事をはじめとする常任幹事の先生方とシンポジストの先生方に重ねて深謝いたします。

シンポジウム A:原因・病態
  • Review:新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)の定義と概念
    戸苅 創, 岡井 崇
    p. 8-10
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)なる用語の解釈に多少の混乱があるのは否めない。例えば,どのような病態をもって原発性新生児遷延性肺高血圧症(primary PPHN)と言うのか,どのような疾患に併発した場合に二次性新生児遷延性肺高血圧症(secondary PPHN)と称するのか,あるいは肺低形成を伴っている場合にはどのように呼称するのかなど,新生児領域の第一線で毎日PPHNを経験している医師ですら,おおよその概念はつかめていても,思い描いている病態は微妙に異なっているのである。そこで,少なくともこのシンポジウムの開催中は,その用語の使用法を統一したうえで,同じ土俵に立って大いに討論を究めるべきであるとの判断から,各演者の発表に先だって,その歴史的背景,定義分類について概説するのが座長の責務と考える。

  • 光田 信明, 川本 豊, 緒方 功, 荻田 和秀, 清水 郁也, 別宮 史朗, 永田 光英, 信永 敏克, 早田 憲司, 末原 則幸, 中山 ...
    p. 11-16
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     はじめに

     新生児遷延性肺高血圧症(persistent pulmonary hypertension of the newborn;PPHN)は従来から先天奇形,仮死などに続発する病態と考えられていた。その本態は新生児早期に持続的な肺高血圧から卵円孔,動脈管を通しての右左シャントになった呼吸・循環障害をさしている。そのrisk factorとして低酸素血症(仮死),感染,肺低形成があげられている。しかし,母体側要因の統計学的検討はほとんどなされていない。今回われわれは,母体側からみたPPHN発症risk factorの検討をしたので報告する。

  • 川本 豊, 藤村 正哲
    p. 19-30
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     目的

     ①新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)を発症した児の臨床経過の特徴を明らかにする。

     ②今回の産科的検討によりPPHNの出生前発症関連因子として明らかとなった4つの因子が,新生児の出生直後からの臨床経過にどのように影響しているか検討する。

     ③他にPPHNの発症関連因子と考えられるものはないか,新生児学的に検討する。

     今回,その呼吸障害の病態が明らかにされており,早産児の代表的な呼吸障害であるRDSの有無によりコントロール群を2群とり,PPHN症例と後方視的に比較解析した。

  • 小口 弘毅, 山田 俊彦, 佐藤 雅彦, 野渡 正彦
    p. 31-39
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     はじめに

     われわれは長期羊水流出に続発する肺低形成に注目して検討を行ってきているが,高度な低酸素血症の原因として肺低形成のみならず肺高血圧の病態が重要であると考えている。今回のシンポジウムの主題は「胎児循環と新生児循環:新生児遷延性肺高血圧症をめぐる諸問題」なので,未熟児の遷延性肺高血圧について報告する。シンポジウムの演題のほとんどは成熟児の新生児遷延性肺高血圧(persistent pulmonary hypertension of the newborn;PPHN)を扱っているが,未熟児の急性期呼吸管理においても,PPHNの病態の把握およびその積極的な治療はきわめて重要である。

     未熟児の出生後の経過はその未熟性に大きく影響を受けるが,また胎内環境も重要である。胎盤循環の悪化要因である母体高血圧,膠原病,妊娠中毒症など,あるいは長期破水による胎内感染,羊水過少症候群(oligohydroamnios syndrome)などを認める場合,未熟児の急性期管理は困難を極めることがある。これは胎内および出生時の仮死の頻度が高いだけでなく,子宮内環境による胎児異常が原因であると思われる。そのなかでも羊水過少症候群で肺低形成が認められる場合,遷延性肺高血圧の頻度は高いと考えられる。

     近年,超低出生体重児のRDSはサーファクタント投与およびHFOの導入により重症例であっても救命が可能となってきている。しかし,長期破水後に出生した未熟児はRDSの合併がないにもかかわらず高率に重症な呼吸不全を呈し,また死亡率も高く,未熟児呼吸管理の大きな課題として残っている。自験例および最近の報告例から長期破水,さらには羊水過少の状態に陥った未熟児のなかには肺低形成を呈し,出生直後から高度な酸素化障害をきたす症例が認められることが明らかとなっている。われわれは,このような未熟児肺低形成の急性期の酸素化障害の強い時期にPPHNの病態を認めたので報告する。

  • 基礎実験から臨床への敷衍
    門間 和夫
    p. 41-50
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     はじめに

     原発性の新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)の成因については過去20年にさまざまな研究と議論がなされてきた。臨床的には原発性の本症は周産期の胎児のストレス,ないし低酸素症が誘因で発症し,肺高血圧と高度の肺血管収縮が基礎にある。実験では低酸素下で胎生期ラットの肺動脈壁が肥大する1)。また羊の胎仔の動脈管をインドメタシンで収縮させたり,また結紮したりすると肺動脈と右室の圧の上昇と肺動脈壁の肥大(中層平滑筋の増加)が生じる2)。臨床的にも妊娠後期にインドメタシンなどの抗炎症薬を投与すると胎児の動脈管が収縮することが胎児エコー検査で認められ3, 4),ときには抗炎症薬を服用した母親から生まれた新生児に本症が生じる5, 6)。本症の肺動脈の強い収縮の基礎には肺小動脈の末梢,正常では平滑筋のない細い血管に平滑筋が生じている7)。胎生期の動脈管収縮は本症の動物実験モデルとなる。

     胎便吸引,横隔膜ヘルニアなど各種の肺,胸郭疾患に合併して二次性に新生児遷延性肺高血圧症が生じる8)。横隔膜ヘルニアはラットなどの実験動物にbis-diamineを投与してつくることができる9)

     以下にはラットでの基礎実験の成績を述べ,その臨床の意味を考察する。以下の実験ではラット胎仔を満期(21日)に帝王切開で取り出し,直ちに-80℃のdryice-acetoneに投入して全身急速凍結法で固定し,胸部を凍結ミクロトームで切り,断面をカラー写真に記録した10, 11)

  • 室月 淳
    p. 51-57
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     はじめに

     新生児遷延性肺高血圧症(persistent pulmonary hypertension of the neonate;PPHN)は,なんらかの原因により出生後も高い肺血管抵抗が持続し,卵円孔や動脈管などを介する右左短絡により低酸素血症を呈する疾患である。通常,正常新生児においては,出生を契機とする肺血管抵抗の急激な低下と肺血流量の増加により肺循環が確立する。PPHNは,その胎児から新生児への移行期におけるなんらかの適応不全と解される。新生児仮死や胎便吸引症候群などが引き金となる場合もあるが,多くは明らかな誘因がなくて発症しており,少なくともその一部には子宮内での慢性ストレスの関与が疑われている。その根拠として,PPHNで死亡した新生児の肺組織に,出生時にすでに病理学的変化が生じていること1, 2),動物実験において,妊娠ラットの母体低酸素により胎仔肺組織の血管壁の肥厚が生じる3)ことなどがあげられる。

     Rudolph4)は,PPHN発症の背景にある病態因子として,①maladaptation, ②maldevelopment,③hypoplasiaの3つを指摘した。出生直後より児の肺血管は拡張して肺血流を増加させるが,その機序にはプロスタサイクリンや一酸化窒素(nitric oxide;NO)が関与していることが知られている。Maladaptationとは,なんらかの原因により肺血管が攣縮したり,あるいは出生時の生理的拡張が阻害されたりすることを指す。Maldevelopmentは,胎児期の肺血管の発達になんらかの異常が生じることで,出生前に生じた肺動脈の筋性肥厚などがあげられる。またPPHNは,先天性横隔膜ヘルニアや羊水過少に合併する肺の低形成(hypoplasia)の症例にも好発する。この場合,肺全体の血管床が少ないため血管抵抗が高くなるのが主たる病態である。

     この研究では,子宮内長期低酸素ストレスと出生後の肺高血圧発症との関連を調べるため,羊胎仔実験モデルを用いた。上で述べた3つの病態メカニズムのそれぞれについて以下の仮説を立て,これらの仮説を検証することを本研究の目的とした。

     ①子宮内長期低酸素により,胎児の肺組織中のNOの産生が低下する。

     ②子宮内長期低酸素により,胎児の肺組織中の血管壁の肥厚が生じる。

     ③子宮内長期低酸素により,胎仔の肺組織の発育不全が生じる。

  • 吉原 一, 島田 信宏, 西島 正博, 塩津 英之, 浅井 仁司, 佐藤 喜一, 源田 辰雄, 根本 荘一
    p. 59-64
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     はじめに

     出生直後の新生児は自ら呼吸を始める。このとき肺は膨らみ,肺への血流量は急激に増加する。胎児期では心拍出量の8%程度であったものが,一挙に10倍になる。このドラマチックな肺血流量の増加はさまぎまなメカニズムによってもたらされる。このなかで最近注目されているのが一酸化窒素(NO)である。まずKinsellaら1)によって羊胎仔の肺動脈血流量がNOによってdose-dependentに増加することが初めて報告された。またCornfieldら2)は人工換気による肺動脈血流量の増加がNO合成阻害剤のL-NAによって抑制されることを見出した。これらの結果から,肺動脈血流量の増加に対するNOの役割が重要視されるようになった。またFinemanら3)の新生仔を用いた実験で,低酸素やトロンボキサンA2による肺動脈圧の増加がNOで抑制されることが判明し,ヒトの新生児の呼吸障害の治療に対するNOの有用性が示された。

     今回の実験は妊娠ヤギを用いて子宮内で胎仔を人工換気して,出生時の状態をシミュレートし,このときの肺動脈血流量の変化とNOの関与を調べるのが目的である。

  • 大道 正英, 神崎 徹, 福家 信二, 光田 信明, 村田 雄二, 村上 典正, 千葉 喜英
    p. 67-76
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     はじめに

     肺高血圧症は成人,新生児を問わず重篤な疾患であり,特に新生児では的確な診断,治療が生命予後に大きく関与する。人工サーファクタントの登場により呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome;RDS)の呼吸循環管理が容易になり,早産児の生命予後が著明に改善された。しかし,胎児循環が遺残し呼吸循環状態が悪循環に陥る新生児肺高血圧症(persistent pulmonary hypertension of newborn;PPHN)は,いまだ満期出産児の重大な死因の一つである。PPHNは慢性的な胎内低酸素状態が原因ではないかといわれているが,いまだその病因については不明で,出生前診断もしくはその予測が困難なのが現状であり,出生後maximam ventilatory supportにても酸素化が悪く,USGにて動脈管(ductus arteriosus;DA),卵円孔(foramen ovale)の肺外shuntが右-左方向で及びTR(三尖弁を介するjet flow)を確認することによって診断可能である。

     しかしながら,新生児の肺血管抵抗について客観的に評価した報告はない。そこで出生後正常新生児の肺血管抵抗はどのように変化していくのか,さらに胎内での胎児肺血管抵抗はどのようになっているのかを検査するため,われわれは,成人肺高血圧の非侵襲的診断に用いられている肺動脈血流波形を用いacceleration time(AT), acceleration time/ejection time(AT/ET) ratioを測定した。

シンポジウム B:治療
  • 実験的PPHNモデルの病態生理とその治療
    鈴木 悟, 村松 幹司, 加藤 稲子, 山口 信行, 森川 郁子, 兵藤 潤三, 戸苅 創, 斎藤 朗, 木村 勝則, 今枝 弘美, 大内 ...
    p. 79-85
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     はじめに

     新生児遷延性肺高血圧症(persistent pulmonary hypertension of the newborn;PPHN)は,胎児期から新生児期への移行期循環がスムーズに進行せず,新生児の肺血管抵抗が胎児期のレベルより下がらないか,いったん低下したものが再上昇した状態と考えられる。しかし最近では,心筋機能不全に伴う体血圧の低下による相対的な肺高血圧症もこの範疇に入れられる場合があり,その病態生理が混沌としてきている。今回は実際の臨床例で考えられるPPHNの病態生理を動物モデルで作成し,その原因・治療について検討した。

  • 茨 聡, 浅野 仁, 丸山 英樹, 前田 隆嗣, 河野 哲志, 丸山 有子, 伊藤 正信, 中村 俊昭, 岡 史仁, 井上 奈々子, 山本 ...
    p. 87-98
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     はじめに

     子宮内において胎児の肺血管抵抗は高く,肺高血圧の状態にあり,その肺血流量は妊娠満期でも両心室拍出量の10%にしか満たない1)。出生後,肺呼吸の開始によりその肺血管抵抗は急速に低下し,肺動脈圧の低下とその血流量の増加が起こる。しかしながら,生後24時間でも肺血管抵抗はまだ体血管抵抗の約半分で,成人レベルの肺血管抵抗に達するには6週間ほど要するといわれている2)。また新生児期の肺血管は,成人のそれとは異なり不安定であり,周産期における低酸素症や肺病変により,容易に収縮し肺動脈高血圧の状態になりやすい特徴がある。近年,肺サーファクタント補充療法(S-TA補充療法)3)が一般臨床に普及し,肺サーファクタント欠乏に起因する呼吸循環障害症例の管理は飛躍的に向上し,その予後も改善されてきている。

     一方,S-TA補充療法により,肺胞虚脱に起因する肺内シャントの急速な解消が可能となり,肺内シャント以外の左右シャント(卵円孔および動脈管)が存在する病態,いわゆる胎児循環遺残症(persistent fetal circulation;PFC)が,以前にもまして明確に認識されるようになり,その原因として重要な新生児遷延性肺高血圧症(persistent pulmonary hypertension of the neonate;PPHN)が注目されてきている。PPHNの治療として,これまで種々の血管拡張薬や高頻度振動換気法による過換気療法などが試みられてきているが,満足のいく治療効果は得られていないのが現状であり,近年では,血管拡張作用をもつ一酸化窒素(nitric oxide;NO)吸入療法4)の効果が注目されている。

     一方,extracorporeal membrane oxygenation(ECMO)は肺ガス交換および循環を膜型人工肺で補助し,重症呼吸不全症例の救命をめざす治療であり,血管拡張だけをめざす治療法ではなく,最近では,体外循環による生命維持法という意味を込めてextracorporeal life support5)ともよばれている。

     ECMOは1976年,Bartlettらが胎便吸引症候群(MAS)の重症呼吸不全症例に対し施行し,世界で初めての救命例を報告6)して以来,米国を中心に全世界に普及してきた。

     近年,ECMO施行症例の救命率も上昇し,その装置および管理法が進歩したためECMOの適応も拡大し,単に救命という目的だけでなく,過度の人工換気療法による肺障害などの後障害の軽減を目的に施行されるようにもなってきている。そこで今回,PPHNの治療におけるECMOの効果について検討を加えたので,当センターでのPPHNの定義とともに報告する。

  • 楠田 聡, 伊藤 有里, 浅田 訓子, 郡山 健, 宍田 紀夫, 宮城 伸浩, 平林 円, 江原 英治, 金 太章
    p. 101-107
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     はじめに

     新生児遷延性肺高血圧症(persistent pulmonary hypertension of the newborn;PPHN)は新生児医療が進歩した現在でも死亡率が高い疾患の一つである。そのため,本症の重症度の把握と,病態に基づいた治療法の選択が重要である1~8)。現在PPHNに用いられている治療法は,高濃度酸素投与,人工換気のほか,過換気アルカリ療法(hyperventilation alkalosis therapy ;HAT)9),血管拡張剤の投与10~14),高頻度振動換気(high frequency oscillatory ventilation;HFO)15),一酸化窒素(NO)吸入療法16-22),ECMO(extracorporeal membrane oxygenation)23)がある。このうち,過換気アルカリ療法,血管拡張剤の投与,NO吸入療法は,PPHNの本態である肺血管抵抗の亢進に対して,直接肺動脈を拡張させる作用をもち,PPHNの基本的な治療法である。しかし,これらの治療法が必ずしもPPHNの予後を改善させていない24)。そこで,PPHNに対して有効な治療法を選択する基準を作成する目的で,新生仔豚に作製したPPHNモデルに対するこれら治療法の有効性を検討した。

  • 立石 格, 河野 寿夫
    p. 109-119
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     はじめに

     新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)の治療法には,心機能や体血圧の維持といったサポートセラピーを基礎として,過換気療法と血管拡張剤による薬物療法があるが,HFOの普及とECMOの導入により予後の改善が得られ,最近では一酸化窒素(NO)吸入療法が行われるようになって,さらなる予後の改善と,侵襲的で人的・経済的コストの高いECMOの施行率を下げることが期待される。しかし,以上の治療をもってしても救命できない症例の可逆性の有無に関する評価や,NOの効果判定についてなど,いまだ解決すべき問題点は多い。そこで,国立小児病院における最近9年間のPPHNの治療法と予後について検討を加えてみた。

  • 河合 伸二, 中尾 秀人, 芳本 誠司, 上谷 良行, 中村 肇
    p. 121-130
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     はじめに

     新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)は,種々の病因による肺動脈の攣縮が本態の症候群である。1992年のRobertsら1)とKinsellaら2)による報告以来,PPHN症例に対して血管内皮由来弛緩因子である一酸化窒素(NO)を吸入することによって肺血管拡張をもたらし肺高血圧を改善させる治療法の有効性が論じられている。NO吸入療法は,従来の血管拡張剤に比べて,血管拡張作用の肺血管ヘの選択性,換気血流不均等の改善,さらに体外式膜型人工肺(ECMO)に伴う,患児への侵襲性と重篤な合併症,人的および経済的コストが少ないという点において優れている。

     一方PPHNは症候群であり,種々の基礎疾患と種々の重症度の症例が存在している。そのため,PPHNに合理的治療であるNO吸入療法であるが,基礎疾患,重症度によりその効果は一様でないことが報告されている3)。私達は1993年より4),兵庫県・大阪府下の8施設のNICUにおいて30症例の重症PPHNにNO吸入療法を行ってきた。これらの症例を通して,NO吸入療法の急性反応性の解析と基礎疾患別による有効性の差異について検討した。

  • 戸苅 創, 岡井 崇
    p. 132-133
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     今回のシンポジウム「胎児循環と新生児循環―新生児遷延性肺高血圧症をめぐる諸問題」は,過去に開催されたシンポジウムに比較して,いくつかの点でユニークな展開となった。なかでも最もユニークであったこととして,新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)なる疾患が,その発症原因および病態が出生後ではなく出生前に集約されることから,午前,午後を通してPPHNという一つの疾患をめぐって原因・病態・治療を一貫して討論できたことがあげられる。つまり,1疾患を1日かけて討論したシンポジウムは例をみないのである。

     また,PPHNの定義,概念が医師間で微妙に異なることがあらかじめ判明していたため,学会当日に限ってこれを統一したこともユニークな点であった。すなわち,学会開催の約1年前に各シンポジスト,関連演題発表者が決定されたが,その折,早速,各演者に座長名でアンケート調査を実施し,PPHN関連用語の定義・概念の微妙な差をまず把握し,次いでこれも座長の責任下で,学会当日に限ってそれらを統一して使用するようお願いしたのである(この詳細な用語の統一に関しては,巻頭の「序にかえて」を参照していただきたい)。

特別講演
  • Charles A. Ducsay
    p. 136-144
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/07/29
    会議録・要旨集 フリー

     INTRODUCTION

     Premature labor and delivery are associated with excessive perinatal morbidity and mortality and continue to be a major health problem. In the United States alone, approximately 8% of births occur prior to term. Although we have made great strides in the care of preterm infants, we have made very little progress in prevention/treatment of this disorder. In order to effectively accomplish this goal, it is imperative that we have a complete understanding to the processes involved in the initiation of normal term delivery. However, such knowledge is lacking. It is this lack of understanding that has prevented us from making adequate progress in dealing with the abnormal timing of delivery.

     With this in mind, I would like to discuss our findings in the area of fetal-maternal communication and how this may impact our current knowledge in the area of the initiation of labor. Due to obvious ethical considerations, human experimentation is extremely limited. We have therefore relied upon the rhesus monkey as a model. Although not identical to the human, the rhesus monkey bears a number of striking similarities to the human during pregnancy. These include similar placental anatomy, endocrinology and fetal physiology. In this model, catheters are surgically placed in both the mother and fetus as well as in the amniotic fluid cavity. The mother is placed in a vest and tether system which then allows simultaneous sampling from both mother and fetus as well as continuos uterine activity recording from conscious, unanesthetized animals during the latter portion of gestation.

     A key observation that served as a cornerstone for the majority of our studies centered on the measurement of uterine contractions. In chronically catheterized pregnant rhesus monkeys near term, we observed a well-defined pattern of contractility. As illustrated in Figure 1, uterine activity occurred most frequently during the hours of darkness, with peak activity observed between 1900 and 0100 hours. This has been a consistent observation from our group (Ducsay and Mc Nutt, 1989;Ducsay and Yellon, 1991, Matsumoto et al., 1991) as well as others (Haluska and Novy, 1993 ;Honnebier et al., 1991). This phenomenon is only apparent during pregnancy and persists in the latter part of gestation and as delivery approaches becomes even more obvious. These data suggest that there is a well-defined communication between other and fetus. In examining these data, two obvious questions arise. The first is what is the purpose of such an interesting phenomenon and second what drives or causes these rhythms? I will attempt to answer these questions in the sections below.

feedback
Top