周産期学シンポジウム抄録集
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第23回
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シンポジウム午後の部
本邦における神経管閉鎖障害発生動向と葉酸摂取勧告の効果
―日本産婦人科医会外表奇形等調査から―
山中 美智子武井 美城住吉 好雄石川 浩史高橋 恒男遠藤 方哉朝倉 啓文佐々木 繁坂元 正一平原 史樹
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p. 63-67

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抄録

 わが国における神経管閉鎖障害発生の動向

 日本産婦人科医会外表奇形等統計調査

 世界保健機構WHOの主導による非政府組織である国際先天異常監視機構(International Clearinghouse for Birth Defects Monitoring Systems ;ICBDMS)は1974年に構築され,先進25カ国以上が参加して先天異常の発生状況や疫学研究を世界的レベルで行っている組織であり,本部はローマにある。このような組織が構築された背景には,1950年初頭から問題となっていた妊婦の風疹感染による先天異常や1957年にドイツで発売された睡眠薬サリドマイド剤による「サリドマイド事件」という問題があった。2005年からはInternational Clearinghouse for Birth Defects Surveillance and Research (ICBDSR)と改名し,各国共同による研究も盛んに行われている。

 わが国でも1972年より日本母性保護医協会(通称「日母」,現日本産婦人科医会)が中心となり,全国規模の出産児の外表奇形調査が始められた。この日母モニタリングシステムは,1989年よりICBDMSの正会員としても加盟し,現在その本部は横浜市立大学医学部の産婦人科におかれて活動を行っている。ローマのICBDMS本部とは四半期ごとに年4回データの情報交換を行い,環境因子をはじめとするさまざまな催奇形因子に関する情報を入手している。本調査では全国約330分娩施設の協力を得て,各病院で生まれた先天形態異常児のモニタリングを行っており,日本の総出産児の毎年おおよそ10%にあたる児をモニタリングしていることになる。北海道から沖縄にわたるこれらの協力施設には,個人医院からいわゆる三次病院にいたるさまざまな分娩施設が含まれており,わが国における分娩のほぼ全体像を反映していると考えられる。

 対象となるのは妊娠22週以降の出産児(死産児も含む)で,生後7日目までに診断のついた形態異常である。なお,この対象となる期間は調査開始から1982年までは妊娠28週以降,1983年から1992年までは24週以降,1993年からは現在の妊娠22週以降というように,時代とともに調査対象期間が変化している。超音波診断装置の普及に伴って,出生直後あるいは出生前に心血管系の異常が見つかることも増えてきているため,1997年からは「心血管系の形態異常」も調査対象に含まれることになった。

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© 2005 日本周産期・新生児医学会
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