抄録
既に同定されているニンジンPSK受容体との相同性から見出されたAtPSKR1は,ペプチド植物ホルモンPSKに対し7.7 nM の結合定数を示すLRR-RLKである.この遺伝子の破壊株pskr1-1を用いて,PSKの植物個体レベルにおける機能の解析を行なった.pskr1-1では,[3H]PSK結合活性は顕著に低下していた.pskr1-1のホモ体は正常に発芽し,無菌的に生育させた植物体の形態は野性株と区別がつかないが,(a)組織が成熟するにつれて急速に脱分化能が低下する,すなわち下位葉では著しくカルス形成能が低下する,(b)無傷植物においてもエチレン処理により著しいsenescenceが誘導される,(c)葉片を暗処理すると著しいsenescenceが誘導され,サイトカイニン処理でも抑制されない,(d)エチレン処理および暗処理によりSAG12が早期発現する,などの形質が観察された.一方,外的に投与したPSKは,アラビドプシスT-87細胞におけるSAG12の発現を抑制した.pskr1-1の下位葉由来細胞も一度脱分化して増殖を開始すれば野性株と同程度の増殖能を示し,芽や根を正常に再分化した.これらのことから,PSKはpost-mitoticなagingを抑制することで細胞のポテンシャルを高め,多面的な生理効果を示しているものと考えられる.