抄録
ムラサキ(Lithospermum erythorhizon)はその根部でナフトキノン系赤色二次代謝産物であるシコニン誘導体を生産・蓄積している。ムラサキ培養細胞においてシコニン生合成は酸性多糖、Cu2+、MJなどによって促進され、NH4+、2,4-D、そして光などによって抑制される。シコニンはシキミ酸経路由来のp-hydroxybenzoic acidとメバロン酸経路産物であるgeranyl diphosphateの縮合反応により生合成されるが、生合成後半の反応、即ち中間体のm-geranyl-p-hydroxybenzoic acidの脱炭酸や、geranylhydroquinoneの水酸化、それに次ぐナフトキノン環の形成など、重要なステップを担う酵素のクローニングはこれまでなされてなかった。
本研究では不明な部分が多い、後半のナフトキノン骨格形成について明らかにするため、シコニン生産暗黒下特異性を利用して、PCRセレクト・サブトラクション法により生合成後半に関わる遺伝子を網羅的に取得することを試みた。暗黒下で発現が促進された約240クローンのうち、酵素反応の性質からシコニンのナフタレン骨格形成に関与する可能性のある遺伝子4種を特定し、今回その中でcatechol polyphenol oxidase とberberine-bridge enzyme に相同性を示す遺伝子の全長をRACE法で単離した。これらの発現を調べるためノザン分析を行った結果、共にシコニンの蓄積と同調する発現パターンを示した。大会では推定生合成経路と中間体の構造についても報告する。