日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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茎器官の抗重力反応における膜ステロールの役割
小泉 朋子榊 剛鈴木 優志村中 俊哉曽我 康一若林 和幸*保尊 隆享
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p. 578

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抄録
植物が重力の力に抵抗して成長する「抗重力」は、重力屈性と並ぶ植物の主要な重力反応である。過重力環境下ではメバロン酸経路を律速する3-hydroxy-3-methylglutaryl-Coenzyme A reductase (HMGR)の遺伝子発現レベルが上昇することから、この経路の最終産物の1つである膜ステロールが抗重力反応に関与する可能性がある。本研究では、膜脂質組成に対する過重力の影響を詳細に解析するとともに、1 g及び過重力環境下におけるHMGRノックアウト変異体の成長解析を行い、この仮説を検証した。過重力環境下で生育したアズキ上胚軸では、1 g 対照と比べて生重量当たりの膜ステロールレベルが高く維持されていた。これに対して、リン脂質、糖脂質、あるいは脂肪酸のレベルには明瞭な変化が認められなかった。過重力は、個々の脂質クラスの脂肪酸組成にも影響しなかった。一方、シロイヌナズナのhmgノックアウト変異体のステロールレベルは、野生型に比べて明らかに低かった。この変異体の胚軸は1 g 環境下ですでに短く太く、過重力環境下でもそれ以上の伸長成長の阻害や肥大成長の促進は見られなかった。HMGR阻害剤であるロバスタチンで処理したアズキ上胚軸でも、ほぼ同様の傾向が認められた。以上の結果から、膜ステロールは、茎器官が重力に抵抗して正常な成長を維持する上で重要な役割を担っていると考えられる。
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© 2007 日本植物生理学会
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