抄録
乾燥種子中には、種子形成時に転写されたRNAが保存され、このRNAを利用して発芽初期のタンパク質合成が起こることが報告されている。しかしながら、乾燥種子中で長期間RNAの活性が保持される仕組みや、吸水直後にこれらのRNAを用いてタンパク質合成が誘導される機構については不明な点が多い。乾燥種子中のRNA結合タンパク質は、乾燥種子中に保存されたRNAの安定性や、これらのRNAを用いたタンパク質合成の誘導に関与する可能性がある。一般にRNA結合タンパク質は、一本鎖DNA(ssDNA)アフィニティーカラムクロマトグラフィーで選択的に精製できる。そこで我々は、乾燥種子中のRNAの機能制御に関わるRNA結合タンパク質の同定を目的として、イネ乾燥種子由来のssDNA結合画分中のタンパク質の網羅的な解析を行った。ssDNA結合画分中のタンパク質は2D-PAGEで分離し、MALDI-TOF-MSによるペプチドマスフィンガープリンティングで同定した。その結果、イネ乾燥種子にはglycine rich RNA binding protein、KH domain containing protein、リボソームタンパク質等のRNA結合タンパク質が存在することが明らかになった。これらのうち、KH domain containing proteinは、種子が吸水すると24時間以内に消失することがわかった。