主催: 日本臨床薬理学会
薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)では、「薬物治療の実践的能力」を培うことを重要な目的と定め、患者個々の状況に対応した薬物治療について学修することを主眼としている。そのためには、病態と医薬品の作用メカニズムの関連性、医薬品の有効性・安全性の適切な評価、医薬品・患者情報の重要性と必要性の理解、すなわち臨床薬理学の学修プログラムが必須である。
静岡県立大学及び帝京大学薬学部では、臨床薬理学教育を通じた実践的能力を持つ薬剤師育成を目指し、実症例に基づいた数々のアクティブラーニングを実施している。
一部を挙げると、静岡県立大学の低学年から6年次にかけて開講される「臨床薬学演習」では、実症例に基づいた代表的疾患患者の治療計画を少人数グループによる問題基盤型学習(PBL)-チュートリアル形式で討論、発表を行う。本講義を通じて病態と薬物の作用メカニズムを関連付けた系統的な理解、ガイドライン等による標準化された治療方針を学ぶと共に、医薬品情報の活用、薬物の有効性・安全性の基本的な評価に必要な能力を醸成している。4年次の「実務事前実習」では、適切な用法・用量・剤形の選択と調剤の基礎を修得すると共に、医療面接、フィジカルアセスメント実習を通じて、患者の病態把握及び根拠に基づいた薬物療法に必要な能力を培っている。TDM実習では、患者検体を模した血液サンプルを定量し、得られた血中濃度及び症例情報を基にした血中濃度シミュレーション、薬物動態パラメータ算出及びそれらに基づいた投与計画を行う。これにより、患者個々の薬物療法に必要な薬物動態の理論の理解、適切な用法・用量を選択できる実践的能力を培っている。
帝京大学薬学部2年及び4年次に開講される「製剤学」「薬物動態制御学」では、症例及び製剤見本を活用した演習を行い、薬物動態に関する薬物相互作用等の基本原理を理解させ、処方の妥当性評価のみならず、薬効評価、副作用の発見等に結び付ける総合的な能力を醸成している。
さらに両施設の研究室配属後の卒業研究では、臨床現場におけるクリニカルクエスチョンを研究として構造化し、臨床薬理学の発展に繋がる科学的根拠の創生を行っている。
このように本発表では、薬学部における臨床薬理学・薬理学教育の実践例をご紹介すると共に、次世代の薬剤師教育への展望について皆様と議論させて頂きたい。