抄録
20世紀末葉において福祉国家と医療の問題を論じるということは, 一方でオイルショック以来の経済的停滞期を経て1980年代以降に展開された「福祉国家の危機」論を前提に, 1980年代末から90年代初頭にかけての社会主義の崩壊という歴史的展開のなかで, もう一度福祉国家の意味内容を確認すると同時に, ほぼ同時期に顕在化してきた「近代医療」の変貌とも表現すべき近年の現象を福祉国家の変貌と関連づける作業を要請する。この作業はつまるところ「モダン」という時代がどのようなものであり, 「モダニティ」というものが何であったのかを, 福祉国家と医療を素材に考察してゆくことを意味すると思われる。本稿では, 以上の課題を念頭に, 近代初期から<モダニティ-福祉国家-医療>の関連を概観し, その現代的位相を検討する。