抄録
終末期には個別の医療が行われるべきであり,そのためには患者の願いや希望を聴いて,個別の課題を話し合うことが必要となる.生死につながるような人生上の体験や在宅酸素療法の開始のような臨床上の転換期を契機として,医師はその患者の終末期を認識し,自らが主導した終末期に関する対話を始めるべきである.そこでは患者の人生観や価値観を把握する試みを通して事前ケア計画(advance care planning)を策定し,その延長線上で患者の考え方を医療に反映させる手段として事前指示(advance directive)を聴くことになる.こうした試みは終末期における患者や家族のQOLの改善につながるとともに,終末期医療の質の向上を帰結する可能性がある.医療者は正確で十分な情報を患者に与え続けるなかで,事前指示を共有していかに具体化するかを考えなければならない.