2023 年 31 巻 2 号 p. 260-263
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症から12週後に肺区域切除術を施行した症例に対する周術期リハビリテーション(リハビリ)の経験について報告する.症例は77歳男性.右下葉原発性肺癌と診断後に,中等症IIのCOVID-19を発症した.7週後に室内気吸入下で自宅退院となったが,労作時の息切れが残存した.術前には抑うつを認め,術後は在宅酸素療法が必要になることへの不安から,酸素投与下での歩行練習に積極的ではなかった.酸素投与下での離床の重要性について理解を深めてもらい,運動療法の効果を実感できるように酸素需要の少ない動作指導を行った.その後は自主的に歩行練習を行うようになり,合併症なく術後14日目に室内気吸入下で自宅退院となった.COVID-19発症後の患者に対する肺切除術の周術期リハビリでは,呼吸機能低下による心理面への影響に配慮しながら患者教育や動作指導を行うことが重要と考えられた.