抄録
偶然誤差と系統誤差を「客観的誤差」と呼ぶのに対して,中学生のような,客観的誤差を知らないし,間違えとの区別もつかない学習段階の誤差を「主観的誤差」と名づけ,主観的誤差の特徴を検討してきた.本研究では,大学1年生に対して調査を実施した.その結果,以下の点が明らかになった.(1)大学1年生が認識する誤差も主観的誤差である.(2)物質同定時,主観的誤差の許容範囲を設定して物質を判断する.(3)許容範囲の設定タイプは,特定の文献値を中心に設定する特定値依存型と,隣接する文献値に影響される隣接値依存型に区別できる.