抄録
本研究は大学入学者選抜試験を全く受けていない学生や,数学の試験は受けなかった者を含む大学1年生の数学力を測定する事を目的とする。知識の保有のみならず思考力,活用力,説明における表現力についても測定を試みる。2010年度には記述式問題を多数含む6種類の問題冊子を作成して13大学で調査を行った。採点後,素点と項目反応理論の両方の尺度を使って分析を行った。その結果,受験者達の数学における強み,弱みの概要が明らかになった。他に,思考力を問う問題の中に高い識別力を持つものがあること,数学の活用や表現については十分な学習がなされていない可能性があることも明らかになった。測定すべき力の一層の明確化,問題の蓄積と洗練,客観性の向上へ向けて研究の継続を図りたい。