抄録
中学校・高等学校に努めて数年経った頃,「自分が書いたこの証明は正しいですか.見てください」という生徒たちの存在に気付くようになった.本来証明とは,ある数学的主張に対して真偽の結論を下したもののはずであるから,証明が正しいかどうかという議論が教育現場で(できるだけ)起こらないのが理想である.筆者は生徒たちのその疑問が,根拠をしっかりと掴みきっていないことから生じるのだろうと推定した.思考のステップの度に,いま下した判断の根拠は何か,ということを考える習慣をつけることで,先のような事例は減少すると考えた.彼らが中学の初年級のうちに根拠を常に意識するよう指導し,論理的思考を身につけることで6年間の数学学習はより高いところまで到達し,より緻密な議論ができると考えられる.具体的には,循環論法のような論理的欠陥に注意が向き,それらを見逃さないようになると予想される.この試みを2002年度から2005年度にかけて,中学1年生と中学2年生を持ち上がりで2回担当した折に,幾何を教材として取り組んだ結果をまとめたものである.