2013 年 124 巻 p. 17-24
農林地は流域面積の中で大きな割合を占め,広大な土壌環境を効果的に調査できればその効果は非常に大きい.本研究では,多周波数電磁探査機を用いて土壌の電気伝導度を測定し,森林の管理が土壌環境に与える影響を調べた.電磁探査の結果を鉛直プロファイルで表示すると,土壌環境の違いは表層近くに特徴的に現れており,間伐が遅れている森林では表層土壌の電気伝導度が高くなる結果が得られた.同サイトでは土壌の透水性が低い傾向があり,有機物も浅部のみに見られることから,浸透性の悪さが表層への物質の集中を促していると推測された.また農地としての履歴のある森林では,表層土壌の電気伝導度が高くなる傾向があり,過去の利用履歴が土壌環境に影響していた.多周波数電磁探査法は非接触で短時間に広範囲の土壌調査が可能であり,詳細調査の前のスクリーニングに役立つと考えられた.