抄録
バルーンカテーテルによる術中組織拡張術を適応した頭皮 ・ 耳介病変30症例を検討した。 全例で, 伸展部皮膚が壊死することなく創の一次閉鎖が得られた。 疾患の内訳は, 脂腺母斑が最多の40% でこれを含む頭皮良性腫瘍が63%, 脳神経外科術後頭皮潰瘍10%, 外傷後瘢痕10%, 耳介変形10%, 頭皮悪性腫瘍7% であった。 耳介部分欠損例では, 骨性の土台がなくても表裏両面皮膚を同時伸展して耳輪を形成できた。 伸展中, 皮膚の蒼白化とともに表皮壊死の前兆である発汗様分泌を認めることがあり, ただちに伸展を中止した。 つむじ付近の伸展例では, 術後に一過性の脱毛を生じる例もあったが, 保存的治療で回復した。皮弁の厚みと血流維持のため, 頭皮下エンベロープを骨膜下に作成して安全性を高めた。 伸展時のバルーンのはみ出しに対しては, 病変切除前に伸展しておく工夫が奏効した。本法は短時間で簡便に行える意外に役立つ手術手技と考えられた。