創傷
Online ISSN : 1884-880X
ISSN-L : 1884-880X
3 巻, 4 号
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第3回日本創傷外科学会総会・学術集会(2011年7月,札幌)特別プログラムより
特集1:陥入爪治療のこだわり
  • 二ノ宮 邦稔, 朴 寿恵, 三宅 啓介, 波田野 智架, 内田 満, 野嶋 公博
    2012 年 3 巻 4 号 p. 154-159
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    目的 : 陥入爪を主訴に来院する症例は多く, 安定した結果が得られる適切な治療が要求される。 われわれは, 1980年ころから一貫して爪甲爪母切除術 (labiomatricectomy : 児島Ⅰ法 ・ Ⅱ法) を行ってきた。 その術式を述べるとともに, 合併症の予防などについて報告する。
    手術方法 : 術前の評価は, Heifetzの病期分類を用いている。 基本的にはⅡ期 ・ Ⅲ期を手術の適応としているが, Ⅰ期であっても長期間症状が持続している症例では手術の適応としている。 麻酔は, 足趾基部で背側より指ブロックを行い, 同部にゴムバンドを巻き止血する。 児島Ⅰ法は第Ⅰ ・ Ⅱ病期の症例のなかで, 爪甲の側爪郭への陥入が軽度で, 側爪溝の浅い症例に行う。 児島Ⅱ法は第Ⅲ期および第Ⅰ期 ・ Ⅱ期の症例のなかで, 爪甲の側爪郭への陥入が高度で, 側爪溝の深い症例に行う。
    結果 : 完治率は高く, 治癒期間も短い。 術後, 爪棘や粉瘤形成などの合併症を1~2% の症例にみた。
  • 宮島 哲
    2012 年 3 巻 4 号 p. 160-166
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    巻き爪症例に対して,小坂らの術式 (1999年,日形会誌) を用いた手術を施行した。 2000年4月から2011年3月までの12年間に手術を施行した68症例125趾中, 6ヵ月以上経過観察できた60症例111趾を対象とした。
    術後成績は, 爪変形もなく疼痛等の症状がないものは79趾 (71%), 軽度爪変形を残したが症状が軽快したものは16趾 (14%) で, 改善を認めたものは85% であった。 また陥入爪変形が生じたものは12趾 (11%) で, 再発を生じたものは3症例5趾 (4%) であった。 本手術法は85% の改善を認め, 有用な術式と考える。 down time が長いという短所があるが, 治療効果が良好であるので, 症例を選べば手術療法も有用と考える。
  • -双茎爪床骨膜弁法-
    黒川 正人, 柳沢 曜, 川崎 雅人, 岩山 隆憲, 長谷川 弘毅
    2012 年 3 巻 4 号 p. 167-173
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    われわれは巻き爪に対して, 全抜爪を行わず, 爪甲露出部のみの部分抜爪を行ったのちに手術を行っている。 両側の側爪郭に切開を加えて, 爪床骨膜弁は双茎皮弁として挙上する。 このときに, 中枢側に切開を延長して, 弯曲している部分の爪母は切除する。 次に, 骨ヤスリを用いて末節骨遠位部の骨棘を削り, 末節骨背側も平坦化する。 最後に, 側爪郭の皮膚を2~3mm の幅で脱上皮して, その上に双茎爪床骨膜皮弁を両側に開いて縫合する。 本法を9例22趾に対して施行し, 全例において形態は改善し, 症状も軽快した。
    全抜爪を行わないために, 術後の爪甲変形は少なく, 爪甲が元の長さまで戻る期間も短かった。 また, 爪床骨膜弁は双茎皮弁として挙上するので, 血行は良好で, 創傷治癒にも有効であった。
  • 青木 文彦
    2012 年 3 巻 4 号 p. 174-180
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    陥入爪の治療に関しては従来より多くの手術的治療法, 保存的治療法が報告されているが, 巻き爪に関しては比較的少ない。 しかし高齢者に多いとされる巻き爪に悩む患者数は非常に多く, また過去に陥入爪手術を受けた爪もその後巻き爪になることがあるため, 潜在患者数は相当数になると考えられる。 本稿では, 近年普及しているワイヤー式爪矯正治療が巻き爪に対して効果的であるだけでなく, 補助療法を加えることでさまざまな病態の陥入爪にも対応できることを示した。 また巻き爪と陥入爪の病態にも触れ, 日常生活のなかでさまざまな病態に変わり得る爪の治療に対し, どのようなスタンスをもって対応をすべきかを考察した。 そしておのおのの病態に対応していくには保存的治療が適しているという考えにいたり, これがワイヤー式爪矯正を中心とした保存的治療を選択する理由となったことを報告する。
特集2:Revisit to expander
  • 井野 康, 力丸 英明, 古賀 憲幸, 清川 兼輔
    2012 年 3 巻 4 号 p. 181-187
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    頭蓋顎顔面および四肢の広範囲の皮膚欠損創に対し, 組織拡張器を用いて整容的に再建する際の問題点は, 組織拡張器を挿入するドナーとなる周囲の健常皮膚の面積に限界があることである。 これに対しわれわれは, 組織拡張器で伸展した皮膚を最も効率よく利用する方法 (unfolded cube advancement flap) を開発した。 この方法は rectangular type の組織拡張器で伸展させた皮膚を直方体の箱とみなし, これを展開するように欠損部に伸展する方法であり, 皮弁の形状は,皮弁先端の両側にさらに皮弁 (以下翼) が付随したT字状の形となる。 本法を, 頭蓋顎顔面領域の7例および四肢の広範囲皮膚欠損創の再建の4例に用いた。 顎顔面領域の7症例では,皮弁は全生着した。 縫合線は表情線や輪郭線にほぼ一致し, 整容的に満足のいく結果が得られた。 四肢の4例では, 両翼先端約1cmの部分にうっ血を認めたが, 保存的に治癒した。 縫合線の多さや輪郭線への不一致などはあるものの, 整容的に改善を認め。
  • 三鍋 俊春, 加藤 達也, 坂 いづみ, 今野 恵理
    2012 年 3 巻 4 号 p. 188-195
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    バルーンカテーテルによる術中組織拡張術を適応した頭皮 ・ 耳介病変30症例を検討した。 全例で, 伸展部皮膚が壊死することなく創の一次閉鎖が得られた。 疾患の内訳は, 脂腺母斑が最多の40% でこれを含む頭皮良性腫瘍が63%, 脳神経外科術後頭皮潰瘍10%, 外傷後瘢痕10%, 耳介変形10%, 頭皮悪性腫瘍7% であった。 耳介部分欠損例では, 骨性の土台がなくても表裏両面皮膚を同時伸展して耳輪を形成できた。 伸展中, 皮膚の蒼白化とともに表皮壊死の前兆である発汗様分泌を認めることがあり, ただちに伸展を中止した。 つむじ付近の伸展例では, 術後に一過性の脱毛を生じる例もあったが, 保存的治療で回復した。皮弁の厚みと血流維持のため, 頭皮下エンベロープを骨膜下に作成して安全性を高めた。 伸展時のバルーンのはみ出しに対しては, 病変切除前に伸展しておく工夫が奏効した。本法は短時間で簡便に行える意外に役立つ手術手技と考えられた。
総説
  • - その問題点と現状 -
    上村 哲司
    2012 年 3 巻 4 号 p. 196-200
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の四肢, 特に足部においては, 神経障害および血流障害などにより壊疽, 潰瘍を合併し, それに随伴する足部感染症から下肢切断にいたる頻度が高い。
    近年, 糖尿病の内科的治療が進歩し生命的予後が改善される一方, 糖尿病足病変が大きな問題となっている。 わが国でも糖尿病性壊疽は近年増加しており, 今後もその傾向が持続することが予想される。 またこのような患者はしばしば虚血性心疾患や脳血管障害などの全身的合併症を有しており, 多くの症例で生命予後が不良である。
    今回, 糖尿病の合併症としての足病変と, その外科治療法である足部 ・ 下肢切断術の選択とその問題点を解説する。 またこの領域に形成外科医が関与する意義を踏まえ, 今後の展望を述べる。
症例報告
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