2015 年 1 巻 2 号 p. A_88-A_96
現在、高齢者による交通事故発生件数の増加が懸念されているが、広告・啓発活動を主とする現行の事故対策は、高齢者に対して十分な効果を発揮しているとは言い難い。そこで、本研究は高速道路上の事故多発地点であるトンネル部を対象とし、運転者の注視、意識等を、高齢者と非高齢者で比較することで、高齢者が知覚、認知、判断、行動からなる運転過程のどの部分で、事故リスクを高めているのかを検討した。その結果、高齢者は前方車両を知覚・認知している場合でも、行動過程において追突事故リスクを高める運転挙動をとる傾向にあることが分かった。さらにその理由として、判断過程において、前方車両への注視に、前方車両への意識、トンネルへの注意が伴っておらず、追突事故自体に対する意識・警戒が非高齢者と比べて低いことが明らかになった。